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日本人をカモにするタイ「ゴーゴーバー投資詐欺」が危ない!不動産投資詐欺にも拡大中

2016.03.10

タイで蔓延する「ゴーゴーバー投資詐欺」

 日本人にも有名な、タイのバンコクやパタヤなどの“ゴーゴーバー”と呼ばれる風俗店。もともとはベトナム戦争の頃にアメリカ軍相手の風俗業として発達したもので、その後はタイの夜の街に定着し、ひしめき合うほど多くの店舗が営業している。

 タイの法律においては日本同様に管理売春は違法であるため、ゴーゴーバーは存在自体が違法だが、世界中から観光客が集まりお金を落とすため、本格的に取り締まられることはなく営業している。

 このゴーゴーバーをめぐって、日本人にこんな投資話が持ちかけられている。

「ゴーゴーバーに1500万バーツ(約5000万円)ほど投資をすれば、毎月150万バーツ(約500万円)以上儲かります。1年もせずに投資資金は回収でき、その後は全部利益になりますよ! これが投資するゴーゴーバーの実際の帳簿なんですが、こんなに利益が出ているんですよ。ぜひ、投資しましょう!」

 ゴーゴーバーは、それを取り締まるタイ現地当局と店舗が“良い関係”をつくることで、違法にもかかわらず本格的な取り締まりをされず営業が許されている。この投資話の実態は、そうした“良い関係”を作るための見えにくい費用が載っていない帳簿をつくり、その帳簿を見せて儲かっているかのように装って、日本人からの投資を受ける詐欺の手口なのだ。

 まんまと日本人を騙して投資させ金が得られると、その直後にタイ現地当局との良い関係などを店は配慮しなくなるため、当局の取り締まりが厳しくなり、店はすぐに潰れることとなる。その後、投資した日本人には「今回は運悪く、手入れで潰れてしまった」と伝え、投資金を奪うというのが“ゴーゴーバー投資詐欺”の手口だ。

 この詐欺の手口は、運悪く手入れが入ったことによる倒産を装うため、詐欺の立証が難しい。被害をタイ警察に言っても、タイの現地当局がかかわる話なので動くことは難しい。かといって被害を日本の警察に言っても、海外における詐欺の立証が難しい上に、タイ現地での違法行為をする店へ投資をしていた人間を救済するために、日本の警察としては動きづらい。そのために日本人に被害が蔓延している投資詐欺の手口だ。

●タイ軍事政権発足、夜の街への影響

 2014年、タイは軍事政権となり、地元警察の腐敗した幹部などが続々と更迭される事態となった。そして現地では、警察よりも軍が現地当局における実権を掌握する傾向が強まっている。今やバンコクやパタヤなどの夜の街の主要なゴーゴーバーでも、店で客がケンカをすれば、警察だけではなくて軍までやってきて、軍により店が営業停止にさせられ潰されるという事態となっている。

 こうした状況の中で、日本人向けにゴーゴーバー投資詐欺をしていた人物も軍とのつながりは少ないことが多く、この手口の詐欺がやりにくくなっているという。

 そこで詐欺師たちが新たなビジネスとして「東南アジアの不動産投資詐欺」を始めており、現地では不動産業界における投資詐欺が増えてきているという。

 日本でも闇金業者の摘発を強化した結果、彼らが“オレオレ詐欺”を大規模に展開するようになったが、タイでは、投資詐欺が減ったら不動産投資詐欺が広がっているというわけだ。今回はそんな現地の状況を取材した。

●アジア不動産投資のリスク

 東南アジアの不動産投資は、今後の成長期待より海外からの投資需要が高まっている一方、需要の高まりに目をつけた詐欺師による被害も増加している。昨年も架空のカンボジア不動産投資をもちかけたとして、FIRST不動産の経営陣ら13人が日本で警察に逮捕された事件が報じられたばかりだ。

 東南アジアでは他にも、カンボジアでコンドミニアム(マンション)などの不動産開発には免許が必要なのだが、その免許もなく、さらに土地すら購入していなかった日本の不動産業者が「コンドミニアムを開発する」と日本人に宣伝し販売していた事が発覚した事例もあった。

 カンボジアの不動産開発免許を得るためには、過去に同国以外も含めて重大な犯罪歴がないことを証明しなければならない。しかし同法人の社長は過去に、沖縄の自宅に拳銃を隠し持っていたとして沖縄県警に摘発、逮捕され、懲役刑で有罪が確定し懲役を受け、出所してまだ数年の人物だった。そのため、同社が不動産開発免許を得られる見込みなど最初からあるわけがなかったという。なお、この会社の不動産事業は、現在は事業譲渡というかたちをとり、会社名が変わった上で、現在も一般の人向けに東南アジア不動産販売として営業が行われている。

 他にも、東南アジアのタイの不動産業界などでも似た事情がある。

 東南アジアの日本人向けにはタイ南部の日本人街、シラチャの不動産が、日本人が多く定住するため不動産価格が上がるとして、日本人向けに多く販売されている。

●「日本人経営」の罠

 そのタイの日本人向け不動産販売でも、一部に不穏な動きが起きている。現地の不動産業者は語る。

「タイの日本人向け不動産販売の業界では、かつてゴーゴーバー投資詐欺をしていた日本人の一部を、今では不動産投資の世界で見かけるようになりました。

 そのせいか販売においても、タイのコンドミニアムをショールームなどで、正規よりも非常に高い価格で日本人に売りつけ、さらにタイでは購入者側の各種手数料は無料にもかかわらず、法外な金額を日本人に請求するといった話が聞かれるようになっています。

 日本人向け不動産投資としては、最近でもシラチャの不動産が上がるなどと言って、そこでサービスアパートをつくり、建築途中で日本人向けに売っている物件などがあるのですが、ある物件は、ゴーゴーバー投資詐欺をしていた日本人が企画した物件です。その物件の販売資料を見ると、『日本人経営の会社が管理するので安心』などと書いてあります。

 しかし実際にシラチャで工事をしている現場を確認すると酷いもので、例えばビルのコンクリートをミキサー車も使わずに、手でこねたりするなどしています。こんな工事をしていれば、強度などもまったく足りない恐れがあり、それこそ完成した物件が倒壊するかもしれないほどの酷い工事内容となっているのです。購入した日本の個人投資家はきちんとお金を払っているはずなのに、一体どれほどのお金がその業者に抜かれているのでしょうか。

 この物件の登記簿などを調べると、この物件を企画した日本人は『自分が社長』と自称していましたが、この人物の名前はどこにも出ておらず、一切の責任を取らないようにしていました。もう逃げる気が満々なんじゃないかと、業界関係者は心配をしています。

 シラチャは、一時的に不動産の供給が少ないエリアで需要が高まったことから、1年ほど前にバブルのようになったエリアなのですが、既に多数の建築計画が発表されて今は供給過剰になりつつあり、さらに日本の若い駐在員の間では、日本人ばかりの町には住みたくないと言われていることから需要が減って、今は情報の早い投資家からは見向きもされなくなってきています。だからこそ今は、大部分のきちんとした業者ががんばらないといけないという時なのですが、こうした詐欺的な物件開発の話が問題として出てくれば、悪影響が出てしまうのではないかと心配されています」

このような被害の広がりについて、元警察官僚で、現在は危機管理コンサルタントとして活躍する屋久哲夫氏は、取材に対して次のように語る。

「ゴーゴーバー投資詐欺の場合、現地の夜の街の店への投資ですから、多少なりとも現地の事情に詳しくないと怖くて投資できませんし、そもそも違法な営業に投資するわけですから、被害者にも自業自得な面もあります。それに対して、コンドミニアムでの詐欺となると、一般の人が気軽な気持ちで投資してしまうでしょうし、さらに日本人経営ということでなんとなく任せてしまいやすいでしょうから、一般人が詐欺被害に巻き込まれるリスクがずっと高いという意味で、コンドミニアム投資詐欺はより大きな問題ではないでしょうか」

●全体としては魅力的な市場だが、投資には注意が必要

 東南アジア不動産投資について、タイなどで不動産情報サービスを提供するAIS(Asia Investment Support)の担当者は、取材に対して次のように語る。

「タイなど東南アジアで不動産投資をされる方は、複数の情報源を元に調べられ、検討されることが必要です。デベロッパーが日本の法人であれば、そのデベロッパーの東南アジアや日本での実績をきちんと確認され、その上で、ご自身でも直接物件に行かれて確認する、もしくは少なくとも物件の販売資料を確認し、販売価格や諸条件が異なっていないか調べられ、できるだけ多様な情報源を得て検討されるなど、投資のためのリスクヘッジとして念入りな調査が必要だと思います。

 ただ、現地の実情でいえば、大部分のデベロッパー、エージェントは真面目に業務をしている業界なので、そのリスクをきちんとヘッジすれば、東南アジアの不動産投資は非常に魅力的な投資先の候補になると思います。特に観光客需要の大きいパタヤなどでは、昨年ごろから急激にAirbnbなどの利用者数が増加しており、購入した部屋をAirbnbで運用し、その部屋がホテルよりも手軽な価格で快適に使える人気の部屋となった物件などでは、非常に高い収益性が上がっていることなどから、より投資の選択肢としても魅力的となっています。

 日本人が多く購入されている物件のデベロッパーでも、日本で実績のあるデベロッパーによる開発案件も増えてきています。都市部でもバンコクなどでは、三井不動産などをはじめ日本の大手デベロッパーが大規模プロジェクトを多く手がけており、安定した実績を上げています。投資としては、大手の場合は管理費用も高く販売価格も高いため、利回りはどうしても低くなりやすい傾向がありますが、品質などの評価は高く、安定した実績ができつつあります。

日本人街のシラチャでも、現地財閥のひとつであるサハグループが日本の東急不動産と経営する『サハ東急』という現地法人などが“ハーモニック レジデンス シラチャ”という非常に立地の良い、日本人駐在員家族向けの不動産を展開している事例などもあります。同物件は賃貸専門物件ですから販売はしていませんが、借りられるなら、こういう物件がいいのではないでしょうか。

 また、南部のビーチリゾートで観光客需要の大きいパタヤでは、日本企業としては現地初となるIEEやEIAといった実質上の建築許可を、日本のライジング・トラストが取得したというニュースもありました。ライジングは日本の東京でワンルームマンションなどの実績を多数有するベンチャー系デベロッパーで、不動産業界では知られてきている存在です。

 タイでは建築許可を得るのは非常に難しく、特にパタヤでも、大手デベロッパーでないとなかなか難しいのですが、その初の認可を日本のベンチャー系デベロッパーが取得したということで、業界では話題となっています。認可された物件は、パタヤ南部のビーチにも近い閑静な住宅街に立地するライジング・プレイス・タップラヤという物件で、観光客に人気のエリアにあります。日本のベンチャー系デベロッパーの開発のため、大企業ほどの管理コストはかからないであろうことから、その収益性がどの程度となるかも話題となっています。

 このように、多くのデベロッパーや、そのエージェントは真面目に業務をしている状況にあり、特に円高となってきている今は、投資においての魅力も増してきている市場です。一部に詐欺的な被害がありますから、そういう話には十分に注意されながら、多様な情報源を得られつつ、注意して投資をされて、良い結果を得られる人が増えてくれたらという思いで、私たちも活動しています」

 本来魅力的な東南アジアの不動産投資、その投資の際には、気をつけるべきポイントには注意を払いながら、多様な情報を調べることが必要だ。

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