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膠着した市場が動き出すのは、いつなのか 注目を集める26日のFRBイエレン議長の発言

2016.08.23

日本ではお盆休みの週も終わり、今週から市場に戻ってきた個人投資家も多いだろう。海外市場でも夏季休暇シーズンが終盤になり、そろそろ市場が動き出すころである。今年の夏は昨年の「チャイナショック」のような出来事もなく、大きな混乱もなかった。

イエレン議長は利上げの時期を明確にするのか

逆に言えば、材料不足でもあり、株価や為替の動きも乏しくなり、強気派も弱気派も動けなかったといえる。しかし、現在のような低ボラティリティの状況が長期化するとは思えない。近いうちに、市場は上昇あるいは下落の方向に大きく動き出すことになろう。

市場の関心は、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれる年次会合でのイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演に集まっている。市場関係者は、この講演の内容をまずは確認したいと考えている。この数日間の市場が膠着しているのは、そのためである。

注目のイエレン議長の講演は26日に実施されるが、市場では「イエレン議長が利上げは遅いペースになるとの見通しを明確にする」と予想する向きが少なくないようだ。

FRB関係者の中でも少数派
となったハト派(=利上げ慎重派)としての発言の重みがどの程度なのか、注目することになるのだろう。

一方、最近は早期利上げの必要性を訴えるFRB関係者が増え始めている。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁などは講演で、「おそらく早期に緩やかな利上げを再開することが理にかなう」と言及している。また、これまでハト派の代表とみられてきたダドリーNY連銀総裁も「早期利上げの可能性は十分にある」としており、利上げのタイミングに対するFRB関係者のスタンスが急速にタカ派に変わりつつある印象が強まっている。

FRBも確固たる自信が持てていない

とはいえ、これらの発言をそのまま鵜呑みにすることはできない。上記の発言の変化は、FRB関係者自身が、これまでの景気判断や政策運営に確固たる自信が持てていないことを示しているともいえる。

政策の透明性が求められる中、ECB(欧州中央銀行)と日銀が市場との対話に失敗している状況にあるため、FRBはこれまでのように、政策の方向性を市場にショックを与えない形で行き渡らせる必要がある。しかし、FRB関係者自身の発言が、その意図を明確に伝えることができていないように思われる。

この点については、筆者には1年前のイエレン議長の発言以来、傾向がより鮮明になっている感がある。

今からほぼちょうど1年前のことだ。金融政策の方向性について、イエレン議長が行った発言をきっかけに、市場が一時混乱をきたした。その後、イエレン議長は体調不良に陥ったとされ、しばらくの間、「表舞台から姿を消す」といった事態に発展した。

実際に体調不良が雲隠れの原因だったかは定かではない。だが、時系列から見ればそのように捉えるのが自然であろう。それ以降、イエレン議長はさまざまな機会において、言質を取られないように慎重に発言することが明らかに増えた。

その結果、FRBが行うべき市場との対話が上手くいかなくなった面は否めない。こうした経緯もあり、26日の講演で、イエレン議長が無理な発言をすることはないだろう。つまり、金融政策に関する明確な方向性は示されないと考えるのが自然である。

したがって、これまで同様に、経済指標を精査したうえで、さらに海外情勢を考慮した上で金融政策を判断するとのスタンスは変わらないだろう。

問題は、経済指標次第としているものの、どの指標がどうなれば、どのようにするのかが明確に示されていない点である。

たとえば、9月2日に発表される8月の米雇用統計が強い内容になれば、9月のFOMC(米公開市場委員会)で利上げを決定するのか。あるいは、最近の経済指標全般が芳しくないので、見送るのか。

動きづらい地合いが続く

だがFRBの政策のスタンスや基準が見えない。また、経済指標が好転した場合、短期的には利上げは正当化されるが、長期的にはそれは正しい政策なのか。その判断もきわめて難しいだろう。

一方で、景気の鈍化あるいは金融市場の混乱がみられた場合、即座に政策を変更することも必要になろうが、それが政策そのものの信頼性の低下につながるようであれば、それはむしろネガティブに捉えられる可能性もある。そうなれば、それはFRBにとっては信頼の失墜であり、ECBや日銀と同じ道を歩むことにもつながる。現在のFRBはそのぎりぎりの線に居るように思われる。

いずれにしても、金融当局の政策の方向性をあらかじめ決め打ちし、その方向で投資戦略を組むことはできない。また現時点では、9月利上げを決めつけるほどの材料が整ったわけでもない。結局は動きづらい状況が続くだけである。

しかし、冒頭にも示したように、このような低ボラティリティの膠着相場が数カ月も続くことはないだろう。さすがに9月2日の雇用統計前後には、明確な方向性が出るだろう。リスクを第一に考慮するのであれば、やはり下方向へのリスクを念頭に入れることになる。このスタンスだけは、今後も当面は変わらない。

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