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スクエアにみるスマホ決済事業の未来

2015.03.13

スクエアとは、いったい何の会社なのか。

設立6年になる同社が当初から手掛けている事業は、スマートフォンやタブレットに接続できる、小型で真四角のクレジットカードリーダーを提供することだ。この装置を使えば、小さな商店や会社でもクレジットカードでの支払いを受け付けることができる。

しかし、同社は昨年、事業の方向性を変えた。

5月には、スクエアを利用する小規模事業者向けに、融資プログラム「スクエア・キャピタル」を導入。また、ユーザー同士が互いの口座に自由に送金し合える、「スクエア・キャッシュ」というスマートフォンのアプリも展開している。そしてこの3月には、即時入金サービスと入金取り消し補償という新サービスを導入する予定で、両者はいずれも小規模事業者にとって便利なものとなるはずだという。

こうした展開のどれもが、スクエアが何を目指しているかを物語っている。

日々のクレジットカードの処理を通じて集められた大量のデータをテコにして、小規模事業者のためのサービス提供企業になろうとしているのだ。同社の事業の成否は、従来からの顧客を満足させながら、いかに新たなサービスで顧客を引きつけられるかにかかっている。

「私たちには大きな競争優位性がある」。スクエアの取締役で、同社に出資しているベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルのパートナーでもあるローロフ・ボタは言う。「スクエアの利用者となるような企業に関して、当社ほどよくわかっている会社はほかにない」。

スクエアによると、同社はこれまでもつねにデータにフォーカスしてきたという。しかし、しばらくの間、同社は消費者との接点となるサービスに重点を置いていた。

たとえば、顧客が単に自分の名前を言うだけで買い物の支払いができる「スクエア・ウォレット」などだ。「スクエア・マーケット」は、オンライン上に簡単に店舗を開くためのサービスだった。

こうした展開は、スクエアの共同創設者でCEOであるジャック・ドーシーが推進してきたものだったが、上手くはいかなかった。同社の事業計画をよく知る人によると、ウォレットやマーケットのような事業はすでに棚上げされているという。

「ウォレットの展開からわかるのは、それほど支払いで困っている消費者はいないということだ」と、スクエアのCFO(最高財務責任者)サラ・フレイアーは言う。

スクエアが60億ドルもの企業評価額に見合うようになるうえでは、大量の取り引きデータを利用することこそが最善の方法かもしれない。識者によると、同社の決済事業には問題が山積みであるという。マージンが少なすぎる、新規顧客の獲得におカネがかかり過ぎるなどの問題だ。

加えて、ペイパルやファースト・データ、アマゾンなどとの競争もある。これらすべての企業には、独自のクレジットカードリーダーとそれに関連するサービスがある。

POS端末メーカー大手のベリフォンは、以前スクエアと同様のカードリーダーを提供していたが、その事業からは撤退した。同社のCEOは撤退直前に、小規模事業者向けの決済サービスは「利益が出るビジネスではない」と語った。

小規模事業者にサービスを提供する大企業の多くが同じように感じていると、調査会社のIDCで国際決済の調査ディレクターを務めるジェームズ・ウェスターは語る。

「それを成功させるには、決済サービスを利用する事業者が大勢必要で、また決済事業を離陸させるためには多額の資金が必要だ」。

スクエアは資金面に関しては対応済みだ。これまでに、ベンチャーキャピタルから5億ドル以上の出資を得た。利用者の確保に関しても、一定の成功は収めている。

スクエアによると、同社は小規模から中規模の「数百万社」にサービスを提供しており、2014年に処理したクレジットカードの支払金額は300億ドル以上だという。(同社は1回の取り引きで2.7%から3%の手数料を受け取るが、それをクレジットカード会社やほかの金融機関とわけ合わなければならない)。

それでも、企業評価額に見合うためにはもっと多くの顧客が必要で、今後も積極的に顧客基盤を開拓していく必要があるだろう。

その目的にかなうのが、「スクエア・キャピタル」などのデータを生かした事業者向けサービスだ。スクエア・キャピタルは、つまりは現金の貸し付けを行う事業で、スクエアを利用する小規模事業者に対して4000ドルから1万ドルの小口資金を融通する。

融資の案内は同社によるデータ解析を基に送られる。支払いの処理を通じて得られた情報から顧客の事業の仕組みを理解し、資金融資のニーズがありそうかどうかを判断する。

儲かる融資事業にチャンスを見い出す

この事業の利幅は大きい。顧客は借入額に10%から14%を上乗せしてスクエアに返済する。また、パートナー企業のビクトリー・パーク・キャピタルからも、顧客開拓と顧客対応の代金として手数料を受け取る。スクエアによると、これまでに2万以上の事業者に1億ドル以上を融資したという。

CFOのフレイアーは言う。「銀行から融資を受けられない人々は確実にいる。理由は何であれ、本当の企業のように扱われないのだ。私たちにとっての確かな市場機会がここにある」。

スクエアはほかにも、小規模事業者向けにデータを生かしたサービスを提供する。新しく導入する即時入金サービスは、引き落とし口座に入っている資金により速くアクセスできるようにするものだ。現在は試験段階で、春頃には利用できるようになる予定だ。また、顧客と事業者との支払いに関するもめごとの一部をカバーする、入金取り消し補償も導入される。

では、もう一度考えてみよう。スクエアとは何の会社なのか。

「昔と変わっていない。少なくとも、あまり変わってはいない」とスクエアは言うだろう。取締役のボタは言う。「いまでも、基本的には決済事業を行う会社と定義している。ただ『決済事業』という言葉の意味が、昔とは違うものになっているとは思う」。

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