世界の投資関連ニュースを独自視点でお伝えしています。

空売りヘッジファンドが頼る新進気鋭の日本人-辛辣な指摘で存在感

物言う空売り投資家が日本株式市場に参入する中で、これまで無名だった地元アナリストが空売りで最も影響力を持ち得る人物として存在感を示しつつある。

  荒井裕樹氏のことだ。初めて空売りリポートを書いたのは約9カ月前だが、同氏が標的とする銘柄の取引は成功が続いてきた。
これら3銘柄の株価は同氏が発起人の調査会社ウェル・インベストメンツ・リサーチがリポート内容を公表してから平均で35%下落、顧客であるヘッジファンドに利益をもたらしてきた。

  株価下落の度合いはこれまでのところ、グラウカス・リサーチ・グループやシトロン・リサーチという名の知れた国外の空売り投資家が標的とした銘柄の値下がりより大きい。
両社ともに今年の夏、初めて日本企業に関するリポートを発表。
荒井氏が今後も実績を残し続けられるかは未知数だが、同氏自身は日本市場には批判的な見方がもっと必要だとし、今後もこの分野で名を成す構えだ。
  弁護士でもある荒井氏(40)は英語のインタビューで、「この業界で私は素人みたいなものだ。自分の能力を示したい」と話した。

  日本株市場に物言う空売り投資家が登場したことで、その戦略のメリットをめぐって論争が起きている。
ファンダメンタルな分析に強烈な表現や攻撃的な姿勢が加わることも多い空売りリポートだが、市場を効率的にし企業の不正を抑制すると好意的に評価する声もある一方、市場操作とほとんど変わらないという批判もある。
  荒井氏は自身のリポートが、コーポレートガバナンス(企業統治)と透明性をそれぞれ向上させる起爆剤にならないかと考えてきた。
シトロンやグラウカスと異なり、自身が標的とする企業の株式でポジションを持ったことはなかったと説明。ウェル・インベストメンツのリポート購読者は全員が外国人投資家だと明かしたが、具体名は示さなかった。

  8月25日の都内インタビューで同氏は「少なくとも現時点で、私はポジションを持ちたくない。顧客との間で利益相反になり得る」と述べた。

  ウェル・インベストメンツの顧客は料金を支払い、荒井氏のリポートを先に読むことができる。同氏はその後、その内容をソーシャルメディアや自身のウェブサイトで拡散。
標的とする企業について「不可解」とか「ばかげている」などの表現を使い、当たり障りのない書き方が多い日本株の調査リポートと一線を画す。

  荒井氏は昨年12月、丸紅に関するリポートを公表。
海外の商品および農業関連の一部投資資産で減損損失を過年度に未計上の疑いがあるとし、株価が40%下がると予想した。
以降、株価は20%下落した。丸紅はブルームバーグの問い合わせに対し、ウェル・インベストメンツとのやりとりなどはしておらず、リポートについてコメントする立場にはないと電子メールで回答した。

  4月27日になると、荒井氏はジグソーに関するリポートを発表。
5月末の続編では同社が「いかなる評価基準においても非常に過大評価されている」とし、「会社の事業や戦略は、当業界の専門家には全く不可解」などと指摘した。
株価は63%下げているが、それでも純資産の約60倍となっている。ジグソーの経営管理ユニットの佐々木彩氏は同社はリポートを把握しているとした上で、コメントを控えた。

  荒井氏の最新リポートはロボットスーツ「HAL」の開発を手掛けるCYBERDYNEについてだ。7月のリポートで、「利益を上げたことがない」ほか、競合企業も多いとして、「極端な過大評価が明らか」だと批判。
同社については、6月にも香港の会議でヘッジファンドのオアシス・マネジメントのセス・フィッシャー氏が、8月にはシトロンのアンドルー・レフト氏が同様に指摘した。

  これに対しサイバーダインは、同社の事業特性を空売り投資家は理解せず、分析が甘いなどと反論してきた。荒井氏の指摘についても、同社の宇賀伸二最高財務責任者(CFO)は「シトロン・リサーチ同様に、非常に浅い分析で事実誤認に基づくリポート」とし、「投資家を無用に惑わせる非常に問題のあるもの」と考えていると電子メールでコメントした。

  荒井氏は東京のほか、香港やニューヨークも拠点とするほか、複数のベンチャーに出資。弁護士としては、ウェルス・マネジメント法律事務所に所属する。
ヘッジファンドの運用も行い、同ファンドの今年1ー8月のリターンは8.1%だという。 
  同氏は自身のリポート内容に基づいてポジションを持っているわけではないので、法に照らして問題になることはないと考えている。弁護士でもあり、必要な場合は自己防衛できそうだ。「私は全然心配していない。自分の意見を述べているにすぎないから」と同氏は話した。

関連記事

アーカイブ