世界の投資関連ニュースを独自視点でお伝えしています。

8年前のような「大暴落」を否定できない理由

2016.09.15

9月15日。8年前のこの日に米国の投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻した。
いまや、誰もが耳にしたことがある「リーマンショック」が起きた日である。この破綻に端を発して、世界的金融危機が発生した事象をそう呼ぶようになった。あれからすでに8年が経とうとしていると考えると、あの日以来、金融市場はつねに不安を抱えた状態が続いていると感じる。

リーマンショックの発端は、2007年のサブプライム住宅ローン危機である。
米国の金融機関による低所得者層への過剰融資に端を発した米国バブル崩壊がショックとなった。
問題は、金融機関がこれらの債務を証券化し、世界中にばらまいたことにある。
住宅市場の悪化や、それに端を発したファニー・メイやフレディ・マックなどの連邦住宅抵当公庫が危機的状況に陥った。
政府支援機関における買取単価上限額の引き上げや投資上限額の撤廃など、さまざまな手を尽くしていたものの、サブプライム住宅ローンなどの延滞率は更に上昇。
住宅差し押え件数も増加を続けた。

未曾有の世界連鎖的な金融危機だった

これを受けて、2008年9月8日には米国財務省が約3兆ドルの追加救済政策を決定した。
これがまさに「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」の走りとなったわけである。
しかし、このような状況はリーマン・ブラザーズも例外ではなかった。
ほかの金融機関とともに、多大な損失を抱える中、最終的には政府の支援を得られず、2008年9月15日に連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請した。
これにより、同社発行の社債や関連の金融商品を保有する企業への影響、さらに金融市場への悪影響が懸念され、これが世界的な金融危機に発展した。

2008年10月3日には当時のブッシュ大統領が、金融システムに7000億ドルの金銭支援をするための法案である「Troubled Asset Relief Program(TARP)」に署名したものの、株価の下落は止まらず、金融市場の混乱の沈静化にはそれから半年以上を要した。
当時の負債総額は6000億ドルともいわれており、未曽有の世界連鎖的な金融危機だった。

このような惨事を鎮めるために、政府・中央銀行はあらゆる手を尽くした。
新たな金融政策を導入したことは、その好例である。市場からの資産買い入れにより、資金供給を増やし、何とか景気・経済を立て直そうとした。
幸い、金融危機はひとまず収まり、世界経済は再び拡大に向かい始めたように見えた。

しかし、その後も欧州債務危機や中国経済の不透明感など、市場心理は好転せず、日米欧の中銀は金融緩和策を解除できずにいた。
米国は先んじて、半ば強引に量的緩和策を終了させ、昨年末にようやく利上げを実施した。
しかし、日欧は相変わらず緩和策を継続しているものの、デフレ脱却に失敗しただけでなく、通貨高になるなど、政策導入時の思惑とは真逆のことが起きるという失態ぶりである。

そもそも、量的緩和やマイナス金利は、デフレを誘発する政策である。
需要のないところに利下げ、マイナス金利、資産買い入れ、通貨安誘導を行っても、まったく効き目がない。
このことをまだわかっていないのが日銀である。来週には「総括的検証」の中で、彼らの現在の考えや今後の政策の方向性についての説明がなされるわけだが、直近の報道によると、マイナス金利の深掘りが今回の政策になるという。このように、これまでの延長線上の政策であれば、市場の方向性は決まったようなものである。

これ以上の金利低下がなければ上昇しかない

しかし、先のドラギECB総裁の理事会後の受け答えを見る限り、ECBはこれまでの政策の限界をすでに理解し始めている可能性があるのではないかと感じた。
資産買い入れ額の増額や期間の延長、マイナス金利の導入などの政策を導入したが、政策が意図した状況にはほど遠い。
このように考えると、これまでの緩和方向だった政策が、ある日突然巻き戻される可能性もあるのではないかと考えられる。
それはむしろ、彼らが判断するのではなく、市場から金利上昇により催促されるのではないかと考えている。

つまり、国債利回りが上昇し、歯止めが効かなくなるほどの上昇になれば、これまでの世界的低金利を背景とした国債への過剰な投資や、その代替として流行した米国の高配当銘柄への投資などが、完全に巻き戻されることになる。
そうなれば、世界の投資マネーが逆流し、一時的に大きなショックとなって株価や国債が大きな調整を強いられることになる。

最近の長期金利の上昇などが、これまでの緩和策の限界を示唆しているとすれば、FRBやECB、日銀でも止めることはできないだろう。
市場は中銀の政策に安心しきって買い上げてきた。しかし、これ以上の金利低下がなければ、今度は上昇するしかない。
そのショックはきわめて大きなものになるのだろう。現在の市場動向は、そのときが近づいていることを示唆しているように感じる。

1929年の世界恐慌から8年後の1937年に米国株はピークを付け、利上げにより年初来で38%もの暴落に見舞われ、株価水準の回復に8年を要した。
2000年にはITバブルが発生したが、その8年後にリーマンショックが発生した。そ
の当時も年初来で38%もの下落となった。そして、その8年後が今年である。1937年と2008年、2016年の共通点がある。それは、年初の取引日の下落率がともに大きかったことである。

1937年と2008年は1.4%超の下落、2016年は1.5%の下落となっている。2016年も1937年や2008年と同様に、年初来からの下落が38%になれば、ダウ平均株価は1万1000ドルまで下落することになる。
これらはあくまで数値上の話であり、机上の空論かもしれない。しかし、これだけ日柄や下落率が似ていることもそうないだろう。さらに言えば、今年は米大統領選の年である。

米国株が無傷で高値を更新するとは思えない

報道によると、民主党候補のクリントン氏の体調不良問題が浮上しているようである。
これをきっかけに、共和党候補のトランプ氏が優勢となり、11月8日の選挙で勝利を収めるようなことになれば、現職大統領所属の政党から出馬する候補が負けることになり、この過去の傾向にのっとれば、米国株の大暴落は不可避となろう。現在の米国株は投資家の流入によって支えられているだけでなく、過去との比較において相当割高になっている。
これだけの材料がそろう中で、年末まで米国株が無傷で高値を更新すれば、むしろ驚きである。

これらから世界の金融市場に真の意味での大きな問題が発生するのだろう。
その場合には、日本株だけが難を逃れることはできない。
ちなみに、リーマンショック時には、日本株も大暴落となり、日経平均株価は9月12日の1万2214円から10月28日には一時7000円割れとなるなど、1982年10月以来、26年ぶりの安値を記録するに至った。このように、約4割の下げが起きるのが金融危機の特徴である。

今年のダウ平均に当てはめると、前述のように1万1000ドルまで下落する可能性があることになる。
海外では「秋口に株安が来る」とする向きも少なくないが、国内勢で本当に危機が来ると考えている向きは少数派である。いよいよ来週はFOMCと日銀金融政策決定会合である。これがトリガーになり、株安・円高に進むのか、それとも市場が延命策を評価するのか。まずは来週の市場動向を見極めることにしたい。

関連記事

アーカイブ