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日本株を吊り上げている「投機家」の正体 日経平均を短期的に押し上げる勢力がいる

2016.12.12

「トランプラリー」が止まらない。米国の主要3指数(NYダウ、ナスダック、S&P500)はすべて史上最高値を更新中だ。また、史上最高値とはいかないが、12月9日、日経平均株価も1月4日のザラ場(取引時間中)ベースの年初来高値1万8951円を上回り、昨年12月以来となる1万9000円台を一時回復した。

イタリアの銀行問題がかすむほど相場は強い

足元ではドル円が115円台をつけていることから、ドル建て価格での日経平均を見ると景色は異なるが、怒涛の6日続落でスタートした今年の日経平均は、ついにここへ来てV字(どちらかというとU字か)回復を果たしている。

ただ、先週末の日本株の動きは、これまでの物色状況とはいささか異なる感じがする。日経平均に対する寄与度が大きいファーストリテイリング(ファストリ)が妙に買われ、TOPIX(東証1部株価指数)が相対的に伸び悩んだ。もし、日経平均先物(225先物)を手掛ける短期筋が指数の押し上げに動いているのであれば、指数先行の地合いとなりこれからの相場は一段と乱高下する可能性がある。

ここで、先週の相場をざっと振り返ってみよう。イタリアの国民投票は、予想通りの否決となったが、市場に与える影響は限定的だった。筆者は当欄で6月の英国によるBrexit、11月のトランプ次期米大統領の誕生で市場が混乱したことを受けて、「二度あることは三度ある」の発想でイタリア政治リスク発生による日経平均の大幅下落を想定した(正確には下落して、その後は急速に戻すと予想した)。

その結果、日経平均は一時的に下落したものの、1万8000円を割るどころか、一時1万9000円台を回復。欧米株も強い動きとなった。「二度あることは三度ある」のことわざは、どうやら筆者の予想が外れることを示唆していたようだ。

欧州が決して無風だったわけではない。欧州中央銀行(ECB)は、イタリア大手銀行のモンテ・パスキの救済計画完了延長を拒否したことで、同社株は10.5%急落、イタリアFTSE指数も下落した。だがこうしたことも飲み込むほど、相場は強い地合いとなっている。

欧州版のいわゆる恐怖指数である「VSTOXX指数」が16台と今年最も低い水準で推移していることから、市場はかなり楽観的になっているといえよう。

とにかく「トランプラリー」はリスク要因など関係ないというほどのエネルギーだ。強いトレンド相場の前には、高値警戒を示すオシレーター系(逆張りの指標)のテクニカル指標などは、いまや完全敗北といった状況だ。

「値がさ株」を意識的に上げる動きに?

前述の通り、日本株はこうしたやけに強い地合いの中で、違和感のある相場展開となった。9日は12月限オプションや先物の特別清算指数(SQ)を算出する特別な日だったことが影響したのかもしれないが、日経平均の寄与度が高いファストリ(寄与度8.6%)、ファナック(同4.1%)の上げが目立った。

実は、指数寄与度の高い銘柄を集中的に売買することによって、日経平均を引き上げ(引き下げ)ることは理論的に可能である。このような動きは、SQ週の前半などによく見られる。オプションに絡んだ売買が背景にあるのだが、SQ算出後にこうした動きが入ることは稀だ。

先週は、前出の2銘柄だけでなく、同じく指数寄与度が高いソフトバンクグループ(寄与度4.7%)の上昇も目立ったが、これは、孫正義社長がトランプ次期米大統領と会見を行い積極的な投資を行うといった材料があったからだ。

一方、9日のファストリ、ファナックは目立った売買材料は観測されていない状況下、買い優勢の展開となっている。こうした日経平均に寄与度が高い銘柄が買われたことから、TOPIXの上昇率(+0.84%)よりも日経平均の上昇率(+1.23%)が上回る格好となっている。買い材料のあったエーザイ(寄与度1.3%)が大幅高となったことも影響しているが、寄付きの段階からいびつな相場展開となっていたことは市場関係者の間でも話題となっていた。

こうしたファストリ、ファナックといった指数寄与度の高い銘柄が強含む相場展開は、指数先行、とくに先物市場に振らされやすい地合いとなりがちである。この局面では、中小型株が「置いてけぼり」となり、日経平均型の銘柄のみ上昇するといった流れだ。

NT倍率の上昇でわかる「特定の投資家たち」の存在

225銘柄で構成する日経平均と、約2000銘柄のTOPIXのどちらの指数が強いのか判断する材料として、日経平均をTOPIXで割ったNT倍率という指標がある。NT倍率は、11月15日の12.65倍あたりから縮小し12月8日には、12.4倍を割り込んでいた。これは、日経平均よりもTOPIXが強かったことを示している。

このNT倍率が9日の終値ベースで再び12.45倍まで拡大した。物色の流れが変わったと判断することもできよう。つまり、日経平均を引き上げたい投資家が、効率よく指数を引き上げるためファストリなどを利用していると考える。

こうした売買を手掛けるのは、短期的な投資を手掛ける外国人投資家が多い。とくにヘッジファンドの一つであるCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)だ。

東証が発表した最新の投資部門別売買高では、外国人投資家は、現物株を4148億円、先物を1999億円買い越している。現物株を中心にしっかりとした買いが観測されていたが、投資部門別売買高はあくまでも発表される前の週の動きをまとめた数値であり、後追い感は否めない。

前述のとおり、9日のメジャーSQという需給イベント通過後に、指数中心の売買を手掛けることは解せないが、今後、一段と短期筋の外国人投資家による指数引き上げの売買が活発化となれば、相場は荒れるだろう。こうした動きは、心理的な節目がしばしば意識されることから1万9500円や2万円という大台で、相場の流れが急変する可能性はある。「上がりすぎ」「そろそろ調整」などをイメージする投資家の心理状態も売りのバイアスを強める要因となろう。

筆者は、来年半ばにかけての中長期的な日経平均及び日本株の上昇を想定している。だが、先週末に物色された銘柄を考慮すると、ここからはCTAなどによる指数先行の乱高下を一段と警戒したい。13~14日に開催されるFOMC(米公開市場委員会)終了後、実質的なクリスマス休暇入りとなりそうな今週は、売買フローの減少も予想される。現物株の商い減少によって、先物の存在感はより増すこととなろう。

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