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金融界の2017年は仮想通貨とブロックチェーンの年になる

2017.01.05

ビットコインの時価総額が史上最高値を記録している。2017年には三菱UFJ銀行の仮想通貨が一般の利用に供されることもあり、金融や通貨に関する基本的な状況が大きく変化すると予想される。

 16年には、仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーン技術に対する期待が一気に高まり、金融機関がブロックチェーンの導入に向けてさまざまな実証実験を行なった。17年においては、この動きがさらに加速されるだろう。

ビットコインの時価総額が
史上最高値を更新

 ビットコインの時価総額が史上最高値を更新している。

 2013年11月末に135万ドルになったが、その後減少していた。15年には、40万ドル程度になっていた。しかし、ここがボトムで、その後増大に転じ、16年12月23日には145万ドルと、史上最高値になっている。

 なお、ビットコインの時価総額の計算法にはいくつかのものがあるが、どの計算法によっても、現在の値は史上最高値だ(Bitcoin Magazine参照)。

 ただし、現実の通貨の残高に比べれば、まだ比較にならないほど少ない。

 もっとも、日本企業の時価総額と比較すると、かなりのところに来ている。145万ドルを1ドル=117円で換算すると約1.7兆円になるが、これは住友商事や三井住友トラスト・ホールディングスの時価総額と同程度である。そして、電通、東レなどの時価総額より大きい。

ビットコインの価格が
1年で2倍に上昇

 ビットコインの時価総額が増大したのは、流通量が増大しているからでもあるが、図表1に見るように、2016年初め以降価格が上昇したことの影響が大きい。価格は、16年初めの約435ドルから2倍以上に上昇した。

ビットコインの価格がこのように高騰した第1の原因は、世界経済の不確実性の高まりだ。

 人民元安を背景に、ビットコインが中国で買われていると見られる。 インドの高額紙幣廃止も影響した。

 また、イギリスのEU離脱やトランプ大統領の登場で世界経済の不確実性が高まっており、投資資金が安全性を求めて、ビットコインへの需要を強めている。

 ただし、それだけではない。ビットコインのスケーリング(取引量増大への対処)の問題が解決しそうであること、またさまざまな新しい関連サービスが開発されていることも、価格上昇の原因だ。例えば、iPhone 7における「サークル」のようなサービスを使えば、コストゼロで現実通貨への転換が可能だ。

◆図表1:ビットコインの価格推移


価格上昇の
意義と問題

 2016年11月以降、世界的に株価が上昇した。為替レートも大きく変動した。しかし、それらの中でビットコインはもっとも顕著に資産価値を上昇させた。16年を通じて見ると、資産としてのパフォーマンスは抜群だった。

 しかも、価格上昇や変動率において、ビットコインは他の資産とは相関していない。これは、大変重要なことである。なぜなら、これは、ビットコインを資産の構成要素に組み入れれば、ポートフォリオリオのパフォーマンスが向上することを意味するからだ。

 こうしたことを背景に、ビットコインは、株式や債券などとは異なる新しいクラスの金融資産であるとの考えが生まれている(Forbes参照)。

 ビットコインがこのように資産の保有目的に使われたり、キャピタルフライトの手段として使われることは、交換手段として使うという観点からすれば、決して望ましいことではない。取引のためには、価格が安定していることのほうが望ましい。

 また、価格が上昇すると、ハッキングの危険が増すということもある。

しかし、資産保有目的の利用を止めることができないのも事実である(また、価格変動を回避したい人は、先に述べた「サークル」のようなサービスを利用して、受け取ったら直ちに現実通貨に変換すればよい)。

 中国では、13年に人民元からビットコインへのキャピタルフライトが起こったため、銀行がビットコインを扱うことを禁止した。しかし、最近起きていることを見ると、この措置は、結局は効果がなかったのではないかと思われる。また、ビットコインの使用自体を止めることは、どんな国でもできない。

 これまで、世界経済に不確実性が高まると、投機資金がセイフヘイブンと考えられる日本円に逃避し、円高になるという現象が生じていた。
しかし、ビットコインがセイフヘイブンと考えられるようになると、今後はそのような効果は弱まるかもしれない。
ビットコインの存在感の強まりは、金融市場を見るわれわれの態度に変更を迫ることになるかもしれない。

メガバンクが
仮想通貨を発行する

 金融機関は、仮想通貨の応用に向けて積極的な取り組みを行なっている。

 日本では、これまで仮想通貨の購入時に消費税が課されていた。これが仮想通貨の利用拡大の阻害要因になっていた。これについて、2017年の税制改革で非課税となることが決まった。これによって、仮想通貨の利用が促進されることが期待される。

 三菱UFJ銀行は、17年の秋頃に独自の仮想通貨MUFGコインを発行すると報道されている。
他のメガバンクも同様の計画をもっているとされる。

 複数のメガバンクが仮想通貨を発行する場合、それらの間で固定価格制を取るか、変動価格制を取るかは、難しい問題である。取引の利便性から言えば、固定価格のほうが使いやすいだろう。しかし、固定価格制を取ると、銀行間で清算、決済を行なう必要があり、それは、日銀ネットを通じて行なわれることになる。すると、コストの削減に一定の限界が付されることになるのではないかと考えられる。

 また、日本では法律上の問題がある。すなわち、現行の銀行法では仮想通貨の取引ができないので、これをどうクリアするかという問題だ。

 改訂された資金決済法では、「不特定多数を相手に転々流通する」「通貨建てでない」という2つの条件を満たすものを「仮想通貨」と定義した。

メガバンクが発行する仮想通貨は、「特定多数を相手に流通する」ものであり、また「通貨建てである」という2つの理由で仮想通貨ではないと見なされるはずである。

 しかし、この規定との関係で、銀行法に抵触しないために固定価格制にする(通貨建てにする)というのであれば、本末転倒だ。

 むしろ、銀行法を改正して、ビットコイン型のものも含め、銀行が仮想通貨を取り扱えることとすべきだろう。

 この問題は、17年秋までの間に結論を出す必要がある。

ブロックチェーンの
応用が進む

 2016年には、フィンテックに対する関心が高まった。なかんずく、仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーンの導入に向けて、銀行や証券取引所がさまざまな実証実験を行なった。これについては、この連載や週刊ダイヤモンドで紹介した。その後の主要な動きとしてはつぎのようなものがある。

 まず、中央銀行による仮想通貨の導入が計画されている。とりわけスウェーデン中央銀行の積極的な取り組みが目立つ。同行は、ekronaという仮想通貨を発行するか否かの決定を、2年以内に行ないたいとしている。この背景には、09年以来、紙幣とコインの使用が40%も減少したという事情がある。

 アメリカのウェブショップであるオーバーストックは、ブロックチェーンを用いた株式の発行を16年10月に行なった。

 また、パリバ銀行は、顧客企業のためのブロックチェーンシステムを開発した(Bitcoin Magazine参照)。

 WEF(世界経済フォーラム)が言うように、ブロックチェーン技術は、金融業を根本から変え、世界を変える力を持っている。

コンサルティング企業であるアクセンチュアの2016年10月の調査レポートによると、9割の金融機関がブロックチェーンの利用を計画している。

 ただし、現在のところ、金融機関の約3割は、POC(proof-of-concept)の段階だ。つまり、金融業務のどこに用いるかを検討中という段階だ。

 考えられている利用対象業務として最も多いのは、「行内の国際取引」(44%)だ。続いて、「国際送金」(21%)、「法人決済」(20%)、「銀行間国際取引」(14%)、「個人間送金」(8%)などとなっている。

 ブロックチェーン利用によるメリットとしては、「コストの削減」「決済時間の短縮」などが挙げられている。

 調査企業であるAite Groupの推計によると、ブロックチェーン関連プロジェクトへの投資は、16年に1.3億ドルになった。そして、19年までには4億ドルになる。(CoinDesk、White & Case参照)。

 しかし、開発のための人材が不足している(Bitcoin Magazine参照)。

 全世界的にそうだが、とくに日本では深刻だ。金融技術には国境がないので、日本で開発が進まなければ、海外からのサービスが日本に押し寄せる。人材の育成が急務である。

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