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ロシアへの投資はありか、なしか

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ロシアに対する欧米の制裁については、今さら多くを語るまでもあるまい。
欧州とロシアの貿易は停滞し、信頼関係は喪失したに等しい。
一方、中国と韓国が欧州の輸出を支え、ロシアと中国と韓国との貿易も増加傾向。
つまり、日本が米国に気兼ねしている間に、中国と韓国は欧州にもロシアにも急接近していたというわけだ。

今からでも遅くないので、日本は対ロシア貿易に踏み込むべきである。
日本の対ロ貿易は思い切った手を打たなかったために、落ち込みぶりが著しい。
特に昨年9月から12月の対ロ輸出ではルーブル安の影響から前年同月比で約60%の大幅な輸出減となった。

一方では、インフレを予測して駆け込み需要が増加するのでルーブル安が進んだ12月には、ロシアではモノが売れまくった。
スーパーの家電の売上高はどこも50~100%増加。モスクワのユニクロも大幅売り上げ増となった。経済は生き物だから日本的な「君子危きに近寄らず」では、中国と韓国の安物に市場を取られるだけである。

一方、ロシアから日本への輸出ではルーブル安がプラスに働く。
ロシアの企業からすれば、国内でルーブルで原料を調達して生産する輸出品は、大半の決済が外貨のドルだから輸出企業は大儲けだ。
もし競合相手があっても値下げで対抗できるわけだから、当然ながら輸出ドライブがかかる。

だが、私が言いたいのはロシアの輸出競争力の話ではなく、ルーブル安なのだから今こそロシアの資源を買ったりロシア株を買ったりするチャンスだということだ。
「ルーブルで買えるなら」だが、すべては半年前の半分の価格で手に入る。ロシアの鉱山や金属工場などからすれば、輸出する時はドルで入金されるのだから困らない。

鉱物資源だけではない。ケミカル原料、農産物、水産物、肥料、飼料とロシアからの輸入品はいくらでもある。
木材・製材もシベリアの「大資源庫」から出てくると思えば、この際、発想を変えてロシアのほとんどの資源を輸入するくらいのことを考えるべきだ。

一方、ロシア世論では、制裁の対抗手段として「欧米からの農産物・食料品の輸入禁止」については72%が「正当だ」との意見がアンケート結果で出ていることを報告したが、いまロシアは農産物・食料品をどこから輸入しているのだろうか?

通関統計によると、もともと農産物は欧州や米国からの輸入が約45%で、その他は中央アジア諸国他CIS、中南米、アフリカ等からだ。
欧米輸入が制限となると、主な輸入先はウズベキスタンなどの中央アジアやトルコや南アに代替品を求める。
EUからの対ロ輸出総額1190億ドルのうち食料品は12.6%の151億ドル、また米国からは149億ドルのうち11%の16.8億ドルだ。
それに対し、日本の対ロ輸出額は135億ドルで、そのうち食料品はわずか0.2%の26百万ドルしかない。
欧米の輸出がなくなったわけだから、日本の農産品が入り込むチャンスが到来しているのである。

話題は変わるが、モスクワでは大変な「日本食」ブームである。

今回のロシア出張では、寿司も天ぷらも何でもそろっているので、現地のロシア人の接待に現地の日本食レストランに連れて行ったのだが、今やロシア人は平気で刺身も食べる。10年以上続いた資源高でロシア人は豊かになり、モスクワ市内なら、寿司屋だけで数百店舗はあるだろう。

なぜ丸亀製麺がブームになっているのか

ただし、だ。日本人の板前がいる店は多くはない。キルギス人やカザフ人などが日本人の格好をして握っているが、見た感じは同じアジア人なのでわからないのだ。ただし、握りを見れば一目瞭然でわかってしまう。シャリはおにぎりのように大きく、ネタの鮮度もイマイチある。欧州から新鮮な鮭が入っていたが制裁で今は冷凍だからいただけない。「ロール物」が中心でボリュームばかり目立つのだ。

そもそも和食といえば、価格水準がロシアレストランの「5割増し」でも通用するので韓国人や中国人のオーナーシェフも寿司ハウスに参入しているようだ。「カロリー過多」のロシア人にとって、和食は健康食品なので、和食ブームは加熱することはあっても、そう簡単に冷めない。

さて、その和食レストランで、今やモスクワのブームになっている店がある。「丸亀製麺」だ(なお、冒頭の写真は丸亀製麺ではないので、あらかじめお断りをしておく)。

実は「日本の讃岐うどんのチェーンですごく流行っている店がある」と言われて見に行ったのだが、実際にロシア人が大挙して列を作っているのを見て驚いた。東証1部のトリドールの外食ブランドの一つだが、海外は90店あり、モスクワだけでいまや5店舗に増えている。

なぜここまで人気なのかと思い、実は味については期待せずに入ってみたのだが、丸亀製麺は日本の味そのもので勝負していた。日本人の私が満足するのだから、ロシア人が列を作るのも当然である。今回行った丸亀製麺は店舗面積約200平方メートル、80席の1号店で、2013年に開店したトレチャコフ美術館の近くにあった。

関係者に聞くと、今後は5年以内にロシアで100店舗を目指すとのことだ。讃岐うどんがこのように大成功しているのだから、日本のラーメン屋などの外食産業やコンビニなどの成功率はかなり高いはずだ。前出のように、本物の日本食はまだまだかの地に少ない。現地をよく研究すれば、大きな成功は必定だ。外食だけではない。その他の日本のサービス産業や教育産業も、豊かになったロシア市場には受け入れられる余地が大きいと予見する。ここは、ぜひ日本の若い起業家に期待したい。

最後は、資源屋らしく、資源の話をからませて終わりたいと思う。

いずれ資源価格が息を吹き返してきた時、ロシアは再び主導的な立場に戻って来ると考えている。
では、それは何時になるのか?ズバリ言えば、2017年には再び資源ブームが来るだろうと予想している。
その主な理由は、今は中国の国内景気の落ち込みから国際市況に影響が過大に出ているが、在庫調整が一段落すれば再び力強い内需の回復が期待できると考えているからだ。

最も大きな要素は原油市況だが、現在の価格はやや行き過ぎであり今後はなだらかな回復基調にならざるを得ないのではないか。米国のシェールオイルにしても50ドルではやっていけないから最終的には70ドル~80ドルレベルで落ち着くのではなかろうか?

また、ウクライナ紛争も全面戦争に発展する可能性は少ないと考える。というのも、欧米の経済制裁とロシアからの対抗措置はどちらの陣営にも得にならず、1~2年で秩序を取り戻すのではないだろうか。こう考えると今のロシアの危機感は、むしろ中長期的な経済発展には良い影響が出てくるという見方をするロシア人も多い。

実際2008年のリーマンショック直後、ロシアでは石油依存体質を改め、自国産業の育成とイノベーションを推進することなどの意見が真剣に討議されたが、意外にショックからのV字回復が早く原油依存体質に後戻りしてしまった。ところが、今回は欧米からの制裁がトリガーを引いたため、プーチン大統領を本気にさせてしまった。

本格的な経済の回復までには、まだ時間は必要だ。だがロシアの方向性は定まったのではなかろうか。もし予想通り2017年から資源ブームが再来したら、その時のロシア貿易は、欧州とは一定の距離を持ち、アジア諸国との距離感がいっそう近くなると予見している。

原油価格が暴落しようが、為替水準が安くなろうが、市中金利が上がろうが、経済制裁を受けようが、ロシアの天然資源は存在していることには変わりはない。
日本の隣国であるロシアの地図上の位置が変わるわけでもない。
日本との地政学的関係は不変である。日露関係を考えるとき、多くの問題点はロシア側にあるとわれわれは考えやすいが、実際には日本側の無関心にも問題があるとの見方も無視できない。

残念ながら、一昔前はロシア貿易の専門家は沢山いたが、今では専門家が不足しており、日本企業のロシアへの理解度や興味も低いように思われる。
一方で、日本の最大貿易相手国である中国は軋みをあげ始めた。中国の対日感情は未だに改善する雰囲気はない。
人件費高騰から、そろそろ中国工場を精算することを考えている日本の経営者はかなりの数にのぼる。率直な現場感覚からいえば、今こそ、中国からロシア貿易に乗り換える好機だという逆張り発想が直観的に当たっているような気もする。

今のロシアの状況を見るにつけても、今こそロシアと日本が友好的な経済互恵関係を推進して手を結ぶ時だと現場感覚から考えるのは私だけではないはずだ。ロシア側の視点からすれば、ロシア側から日本を眺める「逆転地図」のように、ロシアと日本はもっとも近い隣人なのである。

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