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米下院共和党がヘルスケア法案の採決延期-保守派が提案検討

2017.03.24

米下院指導者は23日、ヘルスケア法案の採決を延期した。トランプ政権は共和党で同法案への態度を保留している議員の支持を得るための提案を行い、保守派が検討している。

  下院は同日、法案を採決の予定だったが、共和党の関係者は採決が延期されたと述べた。共和党の指導者は採決が現時点で24日に行われる可能性があるとしている。

今日、下院共和党ヘルスケア・プランの下院での票決があります。そのタイミングに関しては先の記事で書いたので、ここでは繰り返しません。

ウォール街関係者は、この投票を、息を詰めて見守っています。

なぜか?

それはこの投票が単一障害点(Single point of failure)だからです。

単一障害点はサプライチェイン管理や情報システム工学などでよく話題にされる概念ですが、単純化して言えば「そこが×になると、システム全体に支障をきたすようなポイント」のことを指します。

ウォール街関係者は、30年に1度、あるか、ないか?というような大事業である税制改革法案の成立に期待を寄せています。これが実現すれば、5兆ドルもの減税になる(=トランプ案の場合)と言われています。

しかし税制改革法案は重要法案なので、普通なら、いわゆるスーパーマジョリティーと言われる得票数(上院定数100に対し、60票)が必要となります。

共和党は上院で52議席しか占めていません。

幸いなことに、それでも法案を成立させることができる「裏口」があります。

それがリコンシリエーションと呼ばれる規定です。それを満たすためには二つの条件を呑む必要があります:

1) リコンシリエーションを利用して成立する法案は、期限を8年に限定する「時限法案」とすること
2) リコンシリエーションを使う前に、まず予算を成立させること

このうち、いま問題になっているのは2)です。

予算を立てるには、政府予算のうちの大きな支出項目を固定する必要があります。ヘルスケアは大きな支出項目です。

するとトランプ大統領が「オレが大統領になったあかつきには、オバマケアを葬り去り、もっと良いヘルスケア・プランに換える」と安請け合いしてしまったので、折角、オバマケア下では「固定されていた」政府ヘルスケア支出が、試算できなくなってしまったのです。

すると、政府予算を決めるには、まず下院共和党ヘルスケア・プランを可決することが必要になります。

その下院での投票が、きょう実行されるというわけです。

すると下院でこのヘルスケア・プランが否決されれば、当然、予算も立たないし、予算が立たなければ念願の税制改革法案に着手することすらできないのです。

つまり投資家がトランプ大統領に寄せている期待が、全て「パア!」になるということ。

大体、議会での審議なんて紆余曲折があるのが常識だし、(易い)と思って始めた取り組みが、とんでもない難行になることが常です。

今回の下院共和党ヘルスケア・プランだって、仮に今日、下院で可決されたとしても、次は上院で、もっと苦しい闘いを強いられます。

そういうリアリティーを良く理解せず、「ヘルスケア法案は4月に成立させたい」とか、ムニューチン財務長官にいたっては「税制改革法案は8月までに成立できる」とか、本来、誰も予期できないことを軽々しく約束してしまっているわけです。

ウォール街で働くものなら、誰もが「Under promise, over deliver」という原則をわきまえています。これは「最初の約束は控え目に。実際には期待以上の成果を出し、喜ばせろ!」ということです。

この原則は企業の決算についても言えることだし、証券会社の営業成績など、ありとあらゆる局面に共通する鉄則です。

しかしムニューチン財務長官がやっていることは「Over promise, under deliver」になりかねない危なっかしいことであり、これで若し8月までに税制改革法案が成立しなければ、「無能」のレッテルを貼られる事は間違いないでしょう。

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