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ソフトバンク、絶好調決算の先にある”金脈”

2017.05.11

5月10日、ソフトバンクグループ(以下ソフトバンク)が2017年3月期決算を発表した。売上高は8兆9010億円(前期比0.2%増収)と前期並みだったが、営業利益は1兆0259億円(同12.9%増益)、最終利益(親会社に帰属する当期利益)は1兆4263億円(同200.8%増益)と大幅増益だった。

米スプリントの業績が改善

営業増益を牽引したのは米通信子会社スプリントだ。円高で218億円目減りしたのにもかかわらず、ネットワーク費用などのコスト削減が奏功し、営業利益は前期615億円から1864億円と約3倍になった。


「ソフトバンクはわずか36年で1兆円を超えた」。孫社長は得意気だった(撮影:今井康一)
孫正義社長は「営業利益1兆円超えは国内企業でNTTグループとトヨタ自動車とソフトバンクの3社のみ」と説明。

「創業から1兆円超えまでトヨタは65年、NTTは118年かかったが、ソフトバンクはわずか36年で超えた。しかも純益で1兆円超えは国内企業でトヨタとソフトバンクだけ」と語った。

一方で「感動のようなものが不思議と全然ない。達成感がないのはなぜなのだろうと考えたら、1兆円、2兆円は通過点に過ぎないからだ」とも話していた。

ちなみに、ソフトバンクの営業利益は2013年度に一度、1兆円を超えている。ガンホー・オンライン・エンターテイメントと旧ウィルコムの連結化に伴う一時的な評価益を計上したからだ。当時、孫社長は「史上最速で1兆円を突破した」と同じように語っていたが、今回は「これ(2013年度)を除外して考える」と説明した。

最終利益が営業利益の1.5倍近い1兆4263億円になった主な理由は、「非継続事業からの純利益」(以下「非継続純益」)の大幅な増加だ。前期617億円に過ぎなかった非継続純益は5547億円と9倍近くに増えた。

「ソフトバンク=金の卵を産むガチョウ?」

その理由は、世界最大のゲーム会社・スーパーセルと、世界最大のECサイト運営のアリババの株売却益だ。過去に投資した先の巨額売却益が、ソフトバンクを国内でトヨタに次ぐ「純益1兆円企業」に押し上げた。

今回の決算説明会で、孫社長は「ソフトバンク=金の卵を産むガチョウ?」という2年前の決算説明会のスライドを掲示した。

「ソフトバンクは借金が多い、借金の好きな会社だとよく言われる。確かに約2年で純有利子負債(有利子負債から現預金を引いた額)が6兆円から8兆円へと2兆円増えた。しかし、これはいわばガチョウのエサだ。借金は2兆円増えたが、それで企業価値(国内通信事業やアリババ株などの価値を合計した額)は18兆円から25兆円へと7兆円増えた」

2兆円借金を増やすことで企業価値を7兆円も増やした、という独自の見解を披露した。

そのうえで孫社長は「株主価値(企業価値から純有利子負債を引いた額。株主が保有している実質価値を意味する)は2017年5月9日時点で17兆円なのに、ソフトバンクの時価総額は9兆円と株主価値を大きく下回っている。17兆円はいわばガチョウの産んだ金の卵。しかし本当に価値があるのはガチョウ、すなわちソフトバンクの方だ。ガチョウにこそ価値がある」と述べ、「ソフトバンクの株価は安すぎる」という従来からの持論を今回も繰り返した。

金の卵からゴールドラッシュへ

孫社長が「金の卵を産むガチョウ」論を蒸し返したのは、通称「10兆円ファンド」の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(以下SVF)の正当性を主張するためのものだ。SVFはソフトバンク、中東の石油マネーなどで10兆円をメドに組成する投資ファンドで、「100億円以上の投資案件は今後SVFを経由する」予定だと孫社長は言う。

SVFは10兆円規模の巨額資金を背景に、ソフトバンクがこれまで成功してきた投資手法で成長企業を発掘しようとするものだ。「よい投資先は成長し続ける以上、株を持ち続ける。その意味で(投資期限をあらかじめ定めておいて、上場などを機に売り抜けようとする)既存のベンチャーキャピタルとは違う」(孫社長)。

このSVFによる将来の投資成果を孫社長は「ゴールドラッシュ」と定義。「ゴールドラッシュがこれから始まる。これまでの年率平均44%という高い投資成績を示した投資案件も、SVFがこれから出資する案件に比べたら前哨戦に過ぎない」と自信を見せた。

絶頂期を思わせる孫社長のプレゼン。純粋に孫社長の起業家精神に心を打たれたからなのか、それとも1兆円超えを祝福したからか、説明会の最後には大きな拍手が巻き起こった。ただ、最後は「国内通信の設備投資は」と聞かれたのに「国内企業への投資」について滔々と語るなど、さすがに疲労の色は否めなかった。

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