世界の投資関連ニュースを独自視点でお伝えしています。

年収1000万円以上の高所得者があえて賃貸を選ぶ理由

2017.06.02

近年、シェアリングエコノミー(共有経済)が、世界的に急成長を遂げています。タクシーサービスの「Uber」や民泊サービスの「AirBnB」など、耳にしたことがある方も多いと思います。


 シェアリングエコノミーは、場所やモノなどの遊休資産をインターネットを介した個人間の賃貸や売買、あるいは交換することでシェア(共有)していく新しい形の経済活動です。これまで企業と個人間で行われていたBtoCの仕組みから、CtoCの仕組みとなるのが大きな特徴です。

 その市場規模は急速に拡大しており、大手コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によれば、全世界の市場規模は2013年が150億ドルであったのに対して、2025年で3350億ドルとされています。

 日本においても、内閣官房が地方の地域課題解決を目的として、「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」の認定を始めており、国としても期待している産業であることが伺えます。

若年層になればなるほど「持たない」がトレンド

「若者の○○離れ」とはよくいわれますが、「所有する」ことがステータスだった時代から「持たない」ことがステータスになりつつあるのが、若年層です。例えば、1980年代から2000年代はじめまでに生まれた世代を「ミレニアルズ」と呼びますが、彼らの嗜好は今までと大きく異なると言われています。

彼らは所有するための無駄やリスクを少なくし、共有するという消費行動を取るようになっています。子どものころからインターネットに慣れ親しみ、社会人として働き始めたころにリーマンショック(2008年)などの不況を体験している世代ということもあり、CDや本などを買って所有するよりは、「Hulu」や「Netflix」のようなインターネットのオンデマンド放送を楽しもうとします。



 また、2015年に新語・流行語大賞にノミネートされた「ミニマリスト」に表されるように、彼らは、必要最低限のモノしか持たないライフスタイルに合理性と憧れを感じ、「持たない」という文化が一般的になってきています。

 このように、若年層には「所有せずに、利用したい時だけ利用する」という意識が強く、車も部屋も買わずに借りる、共有するというケースが多いのです。


ミレニアルズ世代は幼少期からインターネットに触れ、持たない生活を実践している
 3月1日、国内では来年春に卒業する大学生を対象にした大手企業の会社説明会が解禁され、就職活動がスタートしました。今回報道でも大きく取り上げられたのは、学生たちの「働き方」に対する注目度。企業のブランドや、給与などよりも、残業が多くないかなどの働き方に注目が集まりました。これもまた、ミレニアルズならではと言えるかもしれません。

 彼らのような世代は、マンションを買うというよりも、賃貸暮らしを選択することが多くなりそうです。 すっきりと洗練されたデザイナーズアパートで、必要最低限のモノだけを持ち、スマートな生活をおくるのがこれから主流のライフスタイルになるかも知れません。

高所得者層も「持たない」層が多い

 多くの人が「所有しない」ことを選び始めている中、総務省の調査で興味深いデータがあります。『平成20年住宅・土地統計調査』と、『平成25年住宅・土地統計調査』の比較です。東京都のデータで、年収1000万円以上の世帯のうち、賃貸を選んでいるのは、平成20年の段階で約21%。これが平成25年には約22%と増加しているのです。高額所得者層の2割以上が、「あえて賃貸」を選んでいるといえます。

ここから見えてくるものとして、長い間日本に根付いていた「マイホーム信仰」に縛られず、家族構成や年齢に合わせて住まいを選ぶという生き方がメジャーになりつつあるという背景があります。


 賃貸なら、マンションを買うなどすると発生する固定資産税や都市計画税の支払いから解放されます。経済的な合理性があります。さらに、マンションを買ったあとにつきまとう面倒さも避けられます。たとえば、マンションを買えば、マンション管理組合の一員として、ときには理事になる義務を果たさなければならないかもしれません。これは多くの人にとって、面倒と思わせるものです。

 都心賃貸暮らし、30代で年収1000万円を超える甲田義男さん(仮名)に話を聞くと、「マンションを買ったりすると隣人などが固定されてしまい、面倒な人がいたとしても引っ越しによって避けるのが難しくなってしまう。賃貸である限り、いつでも出て行ける自由さがあり、管理組合の面倒さや欠陥マンションであっても自分には関係ないと思える」と話します。



 若年層の「所有離れ」と高所得者層の「あえて賃貸」の流れは、人口減少が進む日本でも、今後、賃貸需要はあり続けるということを意味するのではないでしょうか。

関連記事

アーカイブ