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米国株の「暴落リスク」が現実味を帯びてきた 日本株に「強烈な円高圧力」が襲い掛かる?

2017.08.04

米国株は、昨年11月8日の米国大統領選挙以降、「押し目買いに押し目なし」、という相場格言どおりの展開になっている。代表的な株価指標であるNYダウ工業平均株価は連日高値を更新、8月2日にはついに初めて2万2000ドルを突破した(終値2万2016ドル)。

トランプ大統領の経済対策実現可能性は日増しに低下

だが、昨年秋から年初にかけて見られた力強さには欠けている。こうした中、注目されるのが米株急落の可能性だ。そもそも米株を取り巻く環境はそれほどいいわけではない。株価を決める要因はさまざまだが、最も重要なものは景気の良しあしである。では米景気の現状はというと、利上げを進めることができるという意味では良好と言えなくもないが、軟調な景気指標も少なくない。たとえば上期の新車販売台数は前年割れとなったし、住宅販売件数の増加も緩慢な勢いにとどまっている。何より、景気の体温であるはずの物価に上昇加速の兆候が見られない。

政策期待の高まりも株価を押し上げる力になるが、金融政策に関しては、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めているし、年後半からはバランスシートの縮小にも着手する方針であるなど、株価の押し上げ要因として働いているとは考えにくい。大統領選挙以降、米株を押し上げてきた最大の推進力であった財政政策についても、ロシアゲート疑惑や議会との対立に伴い、ドナルド・トランプ大統領が公約に掲げた経済対策(減税、インフラ投資など)の実現可能性が日増しに低下している状況にある。

トランプ大統領の公約に対する期待が剝げてきた現在、ほかの下支え要因でもないかぎり、米株には下落圧力がかかりやすくなっていると考えるのが自然である。米企業は低金利環境下で引き続き社債を発行し、その資金を元手に自己株買い(バイバック)に努めて相場を下支えしている模様だが、そうした取り組みにも当然限界がある。大統領選挙後の米株は、いわゆる底値固めをしないまま一本調子での上昇が続いたため、下落圧力に対する抵抗力も弱いと考えられる。

秋口にかけて大統領と議会の対立が先鋭化するなど米国で政治不安が高まった場合、ダウ工業平均株価は大統領選挙後の上昇分をすべて失い、1万8000ドル程度まで下落するリスクがある。

問題は、下落した場合、大統領選挙前の水準までで止まるのかということだ。仮に大統領弾劾の動きが現実化するなどしたら、ダウ工業平均株価は1万8000ドルを大きく割り込み、底割れするシナリオも否定できない。

そもそも「金融危機10年説」という経験則(アノマリー)がある中で、すでに前回の一連の金融危機からほぼ10年が経過していることも気掛かりだ。金融市場のグローバル化が進んだことを受けて、1987年にはブラックマンデーが、1997年にはアジア通貨危機が、2007年にはサブプライム危機が発生するなど、近年は10年サイクルで世界的な金融危機が生じている。本年で前回の金融危機からちょうど10年が経過しており、このアノマリーに基づけば、グローバルな金融危機がいつ生じてもおかしくはないのである。

偶然ではない「金融危機10年説」、ノーガードの日本

しかも、このアノマリーは、単なる偶然ではないと考えられる。特にアジア通貨危機、サブプライム危機に関しては、それらが発生する2年ほど前に、FRBが利上げモードにシフトしたという事実がある。つまり米国が金融引き締めスタンスに転じることで、グローバルなマネーの流れに変化が生じ、後の金融危機につながった可能性は高いと言えよう。今回のFRBの利上げ局面は2015年12月に始まっているが、その前後からの原油を中心とする資源価格の軟調などを考慮すれば、グローバルなマネーの流れには利上げの前後で変化が生じたと判断される。

またこの7月にはカナダ中央銀行が7年ぶりとなる利上げを実施したり、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和の段階的縮小(テーパリング)に含みを持たせたりするなど、FRB以外の主要中銀の間にも金融緩和修正の動きが広がってきた。政策が変われば期待が変わり、マネーの流れも変わる。そのことが新たに金融危機を呼び起こすリスクが、徐々に大きくなっているわけである。

仮に米国株の急落が深刻で、金融危機が意識されるような場合、FRBは一転して利下げやバランスシートの再拡大に着手し、そのショックを和らげようとするだろう。ECBもテーパリングを延期したり、場合によってはマイナス金利をさらに深掘りしたりすることで、緩和を強化する公算が大きい。

では日銀に有効な手立てが残されているのかというと、残念ながら悲観的にならざるをえない。マネタリーベースの拡大にも限界がささやかれる中で、追加の金融緩和手段として量的緩和を強化することはほぼ不可能だ。では当座預金の超過準備付利の一部に対して適用しているマイナス金利を深掘りできるかというと、金融機関の運用益を一段と圧迫することへの批判が強い中では、それも困難である。長期金利を操作目標に据えたイールドカーブ・コントロールについても、それが危機時に有効に機能するかどうかは定かではない。

このように、日銀が政策の実弾を使い果たしたきらいが否めない中では、日本の金融市場は米国株が急落した際のショックに対してこれまで以上に脆弱になっていると理解すべきだ。言わば日本経済は「ノーガード」の状態にあるため、米株の動向次第では、強烈な円高株安圧力が日本を襲うことになるかもしれない。

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