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パリバショック10年、世界の債務は史上最高 シドニーのホームレスにみる金融危機の影

2017.08.07

8月1日、金融の超緩和政策の維持を決めたオーストラリア中央銀行。シドニーの中心街にあるその本店前では、ホームレスのテントが軒(のき)を連ねている 。彼らは、必ずしも収入がないわけではない。家賃が高すぎて支払えないためだ。

金融危機後、シドニーの家賃は2倍以上にハネ上がり、いまや低所得者層の99%が市内には住めないという水準に達した。住居費の上昇が続き、政府は世論の批判を浴びる。それでも、豪ドル高となることを懸念して中銀は金利を上げられず、ホームレス・テントの増加が続いている 。

不動産価格暴騰、債務の規模は人類史上最大

8月9日でパリバショックから丸10年が経つ。その後経済は順調に回復し、米国では株価が史上最高値を更新し続けるなど、今のところ、あまり懸念要素はみられない。

その陰で不穏な動きを見せているのが不動産価格である。価格急騰は、先に挙げたオーストラリアに限ったことではない。不動産会社Savillsの調査によれば、世界の全ての不動産価格の合計は約2京4000兆円とされている(2015年末)。BISの住宅価格の上昇率から推計される世界の不動産価格の上昇幅は、過去10年で6400兆円にも上る。


この連載の過去記事はこちら
不動産価格暴騰を招いた一因は、債務の膨張である。2016年12月末の世界の民間と政府の債務合計額は1京8000兆円。その天文学的な数字もさることながら、より深刻なのは、増加のペースである。足元ではやや落ち着いているが、それでも、この10年間で世界の債務は、GDP(国内総生産)の伸びを大きく上回る63%の増加を記録した 。

8月1日、金融の超緩和政策の維持を決めたオーストラリア中央銀行。シドニーの中心街にあるその本店前では、ホームレスのテントが軒(のき)を連ねている 。彼らは、必ずしも収入がないわけではない。家賃が高すぎて支払えないためだ。

金融危機後、シドニーの家賃は2倍以上にハネ上がり、いまや低所得者層の99%が市内には住めないという水準に達した。住居費の上昇が続き、政府は世論の批判を浴びる。それでも、豪ドル高となることを懸念して中銀は金利を上げられず、ホームレス・テントの増加が続いている 。

不動産価格暴騰、債務の規模は人類史上最大

8月9日でパリバショックから丸10年が経つ。その後経済は順調に回復し、米国では株価が史上最高値を更新し続けるなど、今のところ、あまり懸念要素はみられない。

その陰で不穏な動きを見せているのが不動産価格である。価格急騰は、先に挙げたオーストラリアに限ったことではない。不動産会社Savillsの調査によれば、世界の全ての不動産価格の合計は約2京4000兆円とされている(2015年末)。BISの住宅価格の上昇率から推計される世界の不動産価格の上昇幅は、過去10年で6400兆円にも上る。


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不動産価格暴騰を招いた一因は、債務の膨張である。2016年12月末の世界の民間と政府の債務合計額は1京8000兆円。その天文学的な数字もさることながら、より深刻なのは、増加のペースである。足元ではやや落ち着いているが、それでも、この10年間で世界の債務は、GDP(国内総生産)の伸びを大きく上回る63%の増加を記録した 。

もう一つ、気になるのはクレジット・サイクルである。

クレジット・サイクルとは、企業デフォルトの上昇が一定の周期で発生するという現象のことである。過去、1990年頃の南米危機や米国S&Lの危機、2000年代初頭のITバブルの崩壊、2008年のサブプライムショックと、概ね10年前後の周期で企業デフォルトの上昇とこれに伴う金融危機が勃発した。

こうした周期は単なる偶然ではない。金融危機が発生すると、まず銀行を支援することで危機が終結する。その後銀行は、金融緩和をバックに、おそるおそるリスクテイクを拡大する。それがオーバーシュート気味になったところで、当局が金融引き締めや規制強化を行うと、甘い条件で借り入れを膨らませていた脆弱企業たちが一気に破綻に向かう。
この周期が概ね10年前後というわけだ。

実は企業デフォルトは2015年後半から上昇基調にある。ただ、これはエネルギー関連の大企業のデフォルトが響いているためで、原油価格が安定している今年のデフォルト率はいったん低下するとみられている。例えば格付会社ムーディーズは、今年末のデフォルト率は、2016年末の2.1%から1.5%程度に低下すると予想している 。

利払い負担の増加が先行する

一方気になるのは、企業の収益に対する利払い負担の上昇である。過去も、デフォルト率上昇にやや先行して利払い負担が増加する傾向がみられた。景気拡大で銀行の貸出が拡大したところで金融政策が転換し、脆弱企業を中心に利払い負担がじりじりと増加し始めるためだ。

こうした流れもあり、国際クレジットポートフォリオマネージャー協会 (IACPM)が7月20日に発表した四半期サーベイでは 、これまでの調査を上回る44%の回答者が、今後12カ月のうちにデフォルトが上昇すると予想している。特に、心配されているのが北米の商業用不動産関連で、回答者の3分の2がこの分野のデフォルト率が上昇すると予想している。

デフォルト率上昇は、企業の新陳代謝を促すものであり、恐らく避けられないだろう。問題は、これが大きな危機に発展するかどうかである。

金融危機後、先進国の銀行の不良債権引当金の比率は大幅に減少した。米銀の引当金は貸出総額に対して1.3%と、サブプライム問題の時期の半分以下になっている。邦銀の引当率も一貫して低下を続けており、総貸出に対する引当率は0.4%程度と、2000年代初頭の5分の1程度となっている。

好景気に支えられた現在の企業の財務力をみれば、それも不自然ではない。しかし、実績中心の今の計算方法だと、業績が順調な時には引当金が薄くなりがちで、リスクへの備えが後手に回りがちだ。急速に景気が悪化したり、不動産価格が暴落した場合には、銀行に巨額の損失が発生しかねない。

しかも、世界の債務総額が膨張しているということは、毎年借り換えを迎える債務も増加していることを意味する。これに伴い、企業や国がデフォルトを起こした場合、その規模も巨大になりうる。銀行の資本は厚くなっているとはいえ、規制で求められる最低資本比率も引き上げられてしまっているため、意外と余裕はない。巨額の損失が出れば、貸し渋りと非難されようと、リスク回避に走らざるを得ない。

まだ金融危機は杞憂に過ぎないかもしれない。しかし、一部の資金の流れは、経済実態から乖離し始めており、バブルである可能性が高い。そろそろ警戒感度を上げておいた方がいいかもしれない。

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