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大暴落は忘れた頃に…米中貿易摩擦に用心

2018.04.24

世界の株式市場の関心が米国と中国の貿易摩擦に向けられ、株価も不安定な動きとなっています。米トランプ政権の通商政策は一段と強硬になり、摩擦は激しくなる一方です。政治は予測不可能ですが、状況によっては市場に悪影響が及びかねません。

 特に昨年後半以降、米国株はトランプ政権による大型減税の決定を好感してほぼ一本調子で上昇してきました。それだけに、急落のリスクが気になるところです。今回は過去の急落について、歴史を考えてみたいと思います。

 まずは、日本のバブル期における私の体験談から始めましょう。日経平均株価が1989年末に3万9000円近くまで上昇した直後の90年初めのことです。ある資産運用会社の朝のミーティングで、熟練ファンドマネジャーがおもむろにマイクを握って話を始めました。

 「株式には小調整、中調整、大調整がある。ひょっとすると今回は大調整に至る大暴落の始まりかもしれない」

■下落を的中させた熟練ファンドマネジャー

 株式相場は前年までの上昇とは打って変わって下落の渦中にありました。それでもなお多くの人は上昇を信じて疑わず、市場の高揚感は消えていませんでした。その話を聞いた他のファンドマネジャーは、嘲り笑うかのような表情でした。

 さらに、熟練ファンドマネジャーは、マイクで話を続けます。

 「『半値八掛け二割引き』さえも下回るかもしれない」

 「半値八掛け二割引き」とは、相場用語で暴落時に底値となるめどを指し、計算式は「0.5(半値)×0.8(8掛け)×0.8(2割引き)=0.32」です。つまり高値の約3分の1にまで下がれば、相場は下げ止まり、買うタイミングになるという意味です。

 熟練ファンドマネジャーはこのくらいの下落は覚悟して相場に臨め、といいたかったのでしょう。駆け出しファンドマネジャーの私は近くにあった電卓をたたいて計算し、ビックリしたのを覚えています。日経平均の下落めどの水準は何と1万2000円だったからです。

ところが、信じられないことに、この熟練ファンドマネジャーの予想は的中したのです。それ以降、日経平均はほぼ一貫して下げ、98年に1万2000円台後半まで下落しました。そこから相場はいったん底入れしましたが、再び下落基調となり、2001年に1984年以来17年ぶりに1万円を割り込みました。誰もが「まさか。信じられない」と思いました。

■大暴落は知らず知らずにやって来る

 そのときはIT(情報技術)バブル崩壊や米同時テロも引き金となりましたが、私たちが注意すべきは大暴落は知らず知らずのうちにやって来るということです。バブル期にプロのファンドマネジャーもが予測できなかった大暴落の影は、静かに私たちの足元に近づいていたのです。



 大暴落は歴史的にはどんな頻度で起きたのでしょう? こうした株価の「大調整」を下落幅4割超とするなら、米国株式相場では100年の間に5回程度発生しています。具体的には1929~32年(大恐慌、下落率は8割超)、37~42年(第2次世界大戦、同5割超)、73~74年(第4次中東戦争、同4割超)、2000~03年(ITバブル崩壊、同5割程度)、07~09年(リーマン・ショック、同5割程度)が挙げられます。

 20年に1度というと頻度がさほど多くないため、私たちが成人して、実際に資産運用をやり始めたとしても、大暴落を経験する回数は2~3回程度ではないでしょうか。たいがい「大暴落は忘れた頃にやって来る」ことになってしまいます。

 事前に分かればよいのですが、確実な予測は残念ながらできません。そこで、どのようなときに大暴落が発生したのかを知ることで、イメージを膨らましておきましょう。

■大暴落は国際関係の悪化など2つの背景

 大暴落の背景は大きく2つに分けられます。一つは大恐慌、ITバブル崩壊、リーマン・ショックのように経済の将来に対する楽観が修正される場合です。もう一つは第2次世界大戦、第4次中東戦争のように国際関係が悪化し、自由な交易が阻害される場合です。

 前者は金融緩和によりインフレ率や金利が低下してきた末に、さらなる低下が見込めなくなったときに、それまで拡大していた楽観が急速に冷えることで発生します。後者は戦争突入により国際交易に重大な障害が出て、経済の冷え込みやインフレが懸念される事態となります。

 大調整より規模が小さい調整は数多く発生しています。2割超程度の下落を「中調整」、1割程度の下落を「小調整」とするなら、おおむね中調整は10年に1回程度、小調整は数年に1回程度の頻度で発生しています。

■相場急変への備えをいつも怠らない

 大調整については調整期間が長期にわたるため、かなり慎重な姿勢で投資に臨む必要があります。株式のような変動の大きい資産に投資するなら、いつでも準備を怠ることなく対応したいものです。

 一方で、中調整や小調整については、より安い価格で株式を購入できるチャンス到来と考えてもよいでしょう。

 私は現在、大調整を招く2つの背景が明確に生じているわけではないと考えています。米国の減税政策により、まだ経済への楽観が急速にしぼむような状況ではありません。しかし、トランプ政権の強硬姿勢が続き、米中が貿易戦争に突入するようだと、その限りではないでしょう。ニュースで報道される国際情報をウオッチし、相場急変への備えは怠らないようにしましょう。

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