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人生100年だから資産寿命も長く 低リスク投信に注目

価格変動リスクの小さい「低リスク型ファンド」に安定的に資金が流入している。金融庁が重視する「顧客本位の業務運営」を意識した金融機関が低リスク型ファンドを改めて評価し、販売に注力しているためだ。高齢化時代に対応した資産運用のあり方としても注目される。

 QUICKは投資信託の価格変動リスクを示す指標「QUICK FUND RISK(QFR)」を2001年から公表している。各ファンドのリスクを東証株価指数(TOPIX)を基準に比較し、6段階に分類したもので、最も低いリスクレベル「QFR1」に分類されるファンドの純資産残高は過去3年間で約2.6兆円増加した(図表1)。

■「顧客本位の業務運営」が影響

 要因の一つは何といっても金融庁による「Fiduciary duty(フィデューシャリー・デューティー=受託者責任)」の推進だ。他者の信認を得て任務を行う者が負う責任や役割を指し、金融機関に対して顧客本位の業務運営を求めている。



 組み入れ資産の収益以上の分配金を出す「毎月分配型ファンド」に対し金融庁が厳しい姿勢を取る中で、金融機関は「運用実態に即した分配金」を出すファンドや「基準価額が大きく下がらない」ファンドを販売の中心に据え、結果としてそれらのファンドの残高が増えた。そうしたファンドは総じて価格変動リスクが小さい傾向がある。

 そしてもう一つ、将来を見据える上でより重要ともいえる要因がある。「金融ジェロントロジー」を意識した資産運用を目指すファンドが増加していることだ。金融ジェロントロジーとは、ジェロントロジー(老年学)と金融を組み合わせた分野であり、米国で研究が進んでいる。日本では野村証券を傘下に持つ野村ホールディングスや慶応義塾大学などが取り組みを強化している。

■金融ジェロントロジーの観点

 「人生100年時代」といわれるように高齢化が進む日本においては、金融ジェロントロジーの観点でいかに「資産寿命」を延ばすかが課題となっている。基準価額が大きく下がらないということは資産寿命を延ばすことにつながる。



 今まで主流だった毎月分配型ファンドの中には運用実態より高い分配金を出し続けたことで、基準価額が2000円から3000円台と元本の1万円を大きく下回るファンドが出現。純資産残高が大幅に減少するファンドが出てきた(図表2)。資産寿命を延ばすという観点で、「運用実態に即した分配金」と「基準価額が大きく下がらない」運用をするファンドは、今後の主流になると思われる。

それでは、実際にどんな低リスク型ファンドに資金が流入しているのか。3年間資金流入額ランキングのトップは「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド Aコース」で、3500億円だった(図表3)。先進国の低金利が長引くなか、同ファンドの投資対象である「ピムコ・インカム・ファンド」の最終利回りは5%程度と高い点が評価されたようだ。



 2位は「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)〈愛称・円奏会〉」で3336億円。同ファンドは国内の株式、債券、不動産投資信託(REIT)に分散投資するバランス型ファンドだ。3位は「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド〈愛称・あんしんスイッチ〉」で2354億円。同ファンドの投資対象は世界の株式や債券、短期金融資産などで、資産配分を機動的に変更する。日本で初めて「プロテクトライン」と呼ぶ下限値を設定し、基準価格が常にこの水準を上回るように運用する「損失限定型」のファンドだ。

■低リスク型はバランス型が中心

 資金流入ランキングのトップ20ファンド中12がバランス型ファンドだった。バランス型ファンドの投資対象である株式、債券、REITは景気局面によって、循環的な値動きをする。例えば、景気拡大期には株式やREITなどの価格が上昇し、景気後退期には金利が下がって債券価格が上がる傾向がある。

 1つの資産に集中投資した場合、値上がりすれば大きな収益が得られる半面、値下がりすると損失も大きくなる可能性がある。バランス型ファンドは値動きの異なる複数の資産へ分散投資するため、こうしたリスクを軽減できるのだ。

 これらは基準価格に比較して分配金は小さく、基準価格の水準も1万円を大きく下回るファンドはない。毎月分配型の残高上位ファンドと比較するとその違いは明らかだ。

■テーマ型ファンドとは違う流れ

 トップ20ファンドは「QUICK FUND RISK」で最も低いリスクレベル「QFR1」であり、標準偏差でいうと5%を下回る。標準偏差5%とは、平均リターンを0%とした場合、年間リターンが5%の上昇から5%の下落に収まる確率が約68%であることを示す。その倍の上下各10%に収まる確率は約95%と、年間で10%超下落する可能性はかなり低い。

 過去には証券会社や銀行が自社の利益を優先し、手数料稼ぎの目的で顧客に投信の短期売買を勧めるケースもあった。金融庁が求める「顧客本位の業務」に対応し、今後は証券会社、銀行とも顧客の利益を最優先にした営業スタイルへの移行が進むとみられる。

 投信市場では「人工知能(AI)」「ロボット」「フィンテック」などの価格変動リスクが大きめのテーマ型ファンドがブームとなり、資金流入している。その流れとは異なるが、金融ジェロントロジーの観点からも低リスク型ファンドの役割は大きくなりそうだ。

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