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世界市場波乱の幕開け イタリア、トルコの政治リスク波及

2018.05.25

イタリアやトルコの政治的混乱が、脆弱(ぜいじゃく)さを抱える超緩和的な世界の金融市場に追い打ちをかけようとしている。イタリアのポピュリスト政権発足をめぐり欧州市場で緊張が高まり、トルコの通貨危機が伝染するリスクが新興経済国での売りを増幅させている。

 EU懐疑派政権発足

 イタリアのマッタレッラ大統領は23日夜(日本時間24日未明)、次期首相に反エスタブリッシュメント(規制勢力)政党「五つ星運動」と、反移民政党「同盟」のポピュリスト2党が推すフィレンツェ大学教授、ジュゼッペ・コンテ氏(53)を指名。来週の議会での信任投票を経て連立政権が発足する見通しになった。

 コンテ氏は組閣要請受諾後、「欧州の中でイタリアの位置を確認する必要を認識している」「ユーロ懐疑派の五つ星と同盟の合意に基づいた政策をとる」などと表明。両党の幹部は、ユーロ離脱に備えた計画をたびたび政府に呼びかけてきたエコノミストで企業幹部のパオロ・サボナ氏を財務相候補に推していると述べた。

 コンテ氏が率いることになるユーロ懐疑派政権は、誕生前にすでに市場を不安に陥れている。

 両党は大規模な支出と減税を約束しているが、イタリア経済の低成長の中で実行は困難だ。コンテ氏の政治経験の無さも懸念されている。

欧州の投資家はすでに、イタリアの支出計画とユーロ圏経済の勢い低下を示す指標というダブルパンチに見舞われユーロはドルに対して昨年11月以来の安値を記録。ドイツ国債が急上昇する一方、イタリアやポルトガル債は売られた。状況はさらに悪化する様相を見せている。

 一方、トルコでは来月の大統領選を前に再選を目指すエルドアン大統領が今月、ブルームバーグ・テレビとのインタビューで金融政策への介入を強める意向を表明。市場への影響が懸念され、通貨トルコリラ相場の不安定な値動きが続いていた。

 リラが一時5.5%安まで売られ過去最安値を更新したことを受け、トルコ中央銀行は23日の緊急会合で、主要政策金利である後期流動性ウィンドウ金利を3%引き上げ年16.5%とすることを決めた。

 利上げでリラ防衛

 中銀は「強力な金融引き締めだ」とした上で、今後も必要に応じて利用可能な全ての手段を講じると表明。インフレ見通しに顕著な改善が表れるまで引き締め気味の政策を維持する方針を示した。エルドアン大統領も同日のテレビ演説で金融政策に関して世界的な原則に従うと述べ、市場の不安払拭を図った。

 これを受けリラ相場はいったん反転上昇したものの、緊急利上げは一時しのぎにすぎないとの見方が広がり、リラは24日、一時3.5%安と新興国通貨で最大の下げを演じた。

こうした動きについてアクサ・インベストメント・マネジャーズのシニア・クレジットストラテジスト、グレッグ・ベニゼロス氏は「ゴルディロックス(適温)状態が失われようとしている。年初を振り返ると、市場は確かに油断していた。今は問題の起こりそうな場所を警戒している」と指摘。この上で 「トルコのような新興国特有の問題は、投資家がより広範にリスクを減らす心理的引き金になる可能性がある。投資家は木に止まっている鳥のように、わずかな葉擦れの音で一斉に飛び立つ」との見方を示した。

 リラ売りが悪化するに伴い、他の新興市場資産に対するセンチメントにも影響が及び始めた。

 ここ1カ月のドル高と世界的な借り入れコスト上昇で、新興国の足元は既に揺らいでいる。CCLAインベストメント・マネジメントのジェームズ・ベバン最高投資責任者(CIO)はブルームバーグ・テレビのインタビューで「トルコなど経常収支の赤字が続く国は最も圧力を受ける」と指摘した。

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