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投信はもうからない」の真偽 保有者の損益を探る

投資信託は本当にもうからないのか――。銀行29行を通じて投信を購入した顧客の半数が損失を抱えていたとの金融庁の調査が話題となっている。しかしながら、これはあくまで今年3月末時点での数字。たまたまタイミングが悪いだけだったかもしれない。実際に調べてみると、投信の損益は計測時点で大きくぶれることが分かった。

 今回の調査について、業界からは「3月時点だけの集計結果を示すのはどうなのか」といった声も出ているようだ。その真偽を探るため、投信保有者全体の平均損益(平均リターン)の状況を過去に遡って集計した。

■投信保有者全員の平均購入単価を算出

 個々の投信は不特定多数の人が、おのおの違う口数をランダムなタイミングで売買するが、保有者全員が設定以降これまでに買い付けた基準価格の「平均購入単価」は日々の基準価格や設定額、解約額などを基に推計することが可能だ(ただし、過去に解約した人の分は含まれない)。

 平均購入単価が時系列で分かれば、基準価格と比較することで、それぞれの時点での投信保有者全員の損益状況を推定できる。基準価格が平均購入単価を上回っていれば、保有者全体の損益は含み益の状態、逆に下回っていれば含み損(元本割れ)の状況を示す。ちなみに今回算出した平均損益は、その時点で投信を保有している全員の平均的な損益を表すもので、一定期間内での投信保有者の平均的な損益を年率換算して示す「インベスターリターン」と呼ばれる指標とは異なる。



 対象ファンドは一般購入可能なファンドとし、純資産残高10億円以上などの条件で絞り込んだ結果、720本余り(6月末時点)が対象となった。損益状況を遡ると、元本割れ本数は3月末時点では半分以上にのぼったが、昨年末時点では3割を下回っていた(グラフA)。投信の損益は市場動向や購入タイミングによって大きく左右されるためだ。

■平均損益率は計測時点で大きくぶれる

 昨年末時点より3月末時点で元本割れが多かったのは、年初からの米長期金利上昇をきっかけにした世界的な市場の動揺に影響されたのが理由とみられる。元本割れは英国の欧州連合(EU)離脱決定で金融市場が動揺した2016年半ばには7割を超していた。14年末は2割程度と低く、08年のリーマン・ショック後はしばらく7割から9割超が元本割れしていた。いずれにしても、平均損益率は計測時点で大きくぶれることが分かる。

対照的に、確定拠出年金(DC)専用ファンド(集計対象は現在200本弱)ではここ数年、保有者全体の平均損益はプラスで安定している。元本割れ本数も少ない。DCは定時定額の積み立て投資が基本なので、金融危機などで元本割れをしたときに安値で購入し続けた効果がその後の市場回復で顕在化したといえる。

■DC専用の平均損益率は一般投信上回る



 その上で、一般購入可能なファンドの保有者全体の平均損益率を算出すると、3月末時点で3%程度のプラスだった(グラフB)。これに対し、DC専用ファンドの保有者全体の平均損益率は3月末時点で約20%のプラスと、一般購入可能ファンドを継続して上回っている。



 それでは、個別ファンドの保有者の損益状況はどうなっているのか。対象ファンドを一般購入可能とDC専用に分け、6月末時点での残高上位と平均損益率の上位を抽出した(表C)。

 一般購入可能とDC専用どちらも平均損益率上位には、日本株や外国株でアクティブ(積極)運用する信託報酬が高めのファンドが並んでいるのが特徴的だ。

首位は8年前に設定された「いちよし・インベスコ 中小型成長株オープン」の約140%。保有者の運用資産は平均で元本の2.4倍になったことになる。同投信は一般購入可能だが、DC専用ファンドを大きく上回る平均損益率を記録した。

■独立系投信も積み立てで健闘

 一般購入可能なファンドでは「さわかみファンド」や「浪花おふくろファンド」など独立系運用会社の投信も平均損益率が高い。DC専用ファンドと同じように、積み立て投資を軸足にした販売戦略が功を奏しているといえそうだ。



 最後にグラフDを見てほしい。表Cで残高最大の「ひふみプラス」の保有者全体の平均損益率の推移だ。同ファンドは6月末時点での平均損益が11.2%のプラスと堅調だが、時系列で見ると大きくぶれていることが分かる。基準価格は日々変動するし、売買するタイミングも違うだろうから当然といえば当然なのだが、一喜一憂しても仕方ない。

 どんなファンドでも元本割れのリスクはある。最近は安定性が目立つDC専用ですら、大半のファンドは08年の金融危機後しばらく元本割れが続いていた。肝心なのはそこで諦めずに投資を続けることだ。長期の積み立て投資が投信保有者の損益にプラスの効果をもたらしやすい傾向は今回の調べでも鮮明に表れている。

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