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日本は“投信後進国”!?グローバル調査下位の理由

2015.07.10

米モーニングスターはこのほど、世界25カ国の投信市場を評価した「グローバル・ファンド・インベスター・エクスペリエンス(GFIE)」(PDF、2.3MB)レポートを発表し、日本の評価を前回(2013年)の「C」から「C-」に一段階引き下げた。今回で3回連続の引き下げとなり、「C-」は25カ国中、イタリアと並んで下から2番目に低い評価となる(図表1)。

図表1:GFIEの総合評価
図表1:GFIEの総合評価
注)↑前回調査より上昇 ↓低下 =変わらず *新規調査対象
出所:モーニングスター作成

 2年に1回発表される同レポートは「規制・税金」、「情報公開」、「手数料・費用」、「販売・メディア」という4つの項目で各国の投信市場を評価し、これらを合算してA(最高評価)からFまで12段階でランク付けしている。日本は「規制・税金」が「B」、「情報公開」が「C」、「手数料・費用」が「D+」、「販売・メディア」が「B-」となっており、「情報公開」と「手数料・費用」の低評価が足を引っ張った。

交付目論見書はより簡潔に、ファンドマネジャーやポートフォリオの情報開示も課題
 「情報公開」の問題点として挙げられたのが目論見書の内容だ。重要な情報のみを記載した簡易目論見書(日本では交付目論見書)は、読みやすさを重視して簡潔にまとめることが望ましく、多くの国は5ページ以内でまとめていると指摘されている。日本でも交付目論見書の簡素化が図られてきたものの、国際的に見ると、10ページを超えるファンドが目立つ日本の現状は改善の余地があるとされた。

 交付目論見書の記載事項については、大部分のファンドで投資リスクの記載が一般的な内容にとどまっており、各ファンドの投資方針に特有のリスクについて言及がない点が課題として挙げられている。また、ファンドマネジャーの情報を開示する国が増加傾向にある中、日本ではファンドマネジャーの名前や運用経験年数、報酬体系、ファンドへの自己資金の投資額の記載などの情報が記載されることはほとんどなく、低評価につながった。

 ポートフォリオの組み入れ銘柄の開示については、月次で全銘柄を開示するのが理想とされ、実際、今回の調査対象国25カ国のうちインドと韓国は月次での開示を行っている。一方、日本では年1回または2回作成される運用報告書で全銘柄が開示されるが、月報では組入上位のみにとどまっており、十分ではないとの評価だ。

コスト競争力に改善余地、ノーロードの普及進まず
 もう1つ低評価につながった項目が「手数料・費用」だ。ファンドにかかるコストは予め把握できるため、パフォーマンスを予測する上で重要な要因になる。今回の調査では前回に引き続き、ファンドを保有し続ける限り継続的に基準価額から差し引かれるエクスペンスレシオ(日本の信託報酬にほぼ相当)について、資産クラスごとの純資産額加重での平均値比較が行われた。これを見ると、日本は国内籍の債券型ファンドが1.51 %と、カナダと台湾と並び最も高い水準となっているほか(図表2)、株式型が1.65%、バランス型が1.40%などその他の資産クラスは平均的な水準にとどまり、コスト競争力は目立っていない。

図表2:債券型ファンド平均エクスペンスレシオ
図表2:債券型ファンド平均エクスペンスレシオ
出所:モーニングスター作成

 エクスペンスレシオ以外で言及されたのが販売手数料の有無だ。日本では大半のファンドで販売手数料を支払う必要があり、販売手数料無料(ノーロード)のファンドはまだ少ないと指摘されている。また、成功報酬については、運用成果を上げた場合にコストに報酬額が上乗せされる方式が許可されているが、理想としては運用成果を上げられなかった場合にペナルティーが科せられる方式が望ましいとされた。このように、「手数料・費用」は、エクスペンスレシオが割高で、ノーロードファンドも少なく、成功報酬も改善の余地があるといった点が総合的に考慮され、「D+」という低評価になった。

NISA評価も、手数料重視の販売はマイナス
 評価が低かった「情報公開」と「手数料・費用」では厳しい指摘が目立ったが、その他の項目では、「規制・税金」の面でNISA(少額投資非課税制度)の導入が評価されたほか、「販売・メディア」においては新聞などで長期投資やコストの重要性を説く記事が見られることはリテラシーを高める上で有効と、プラスに評価されている面もある。

 もっとも、販売員が投資家にとって最適なファンドがあると考える場合でも、特定のファンドに過大な手数料が設定されているため、手数料を優先した営業が行われやすいことは問題視された。一部では預かり資産を伸ばすことを重視し、ポートフォリオのコアとなるファンドを販売手数料なしで対面販売する動きがあるなど変化の兆しは見られるが、全体では依然として純資産額上位に販売手数料が比較的高いハイリスクのファンドが目立つのが現状。投資家の長期の資産形成を後押しする動きが本格化すれば、より高い評価につながるだろう。

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