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帰ってきた「うそつきローン」、AAA格付け証券に密かに潜り込む

これは面白い記事です

売り込みの資料にはアメリカン・ドリームを絵にしたような写真が付いている。
白いフェンスに囲まれたしゃれた一軒家だ。

米カリフォルニア州マンハッタンビーチのこの住宅の値段は295万ドル(約3億5400万円)。
夢のような住宅の裏には、サブプライム時代の毒性住宅ローン、「うそつきローン」という暗い秘密が隠されている。

米住宅バブル破裂から何年もたった今、借り手の財務をチェックせずに供与される、いわゆる「うそつきローン」とよく似た種類の住宅ローンが市場にじわじわと戻りつつある。
そして前回と同様に、このようなローンのリスクはウォール街を通じて広く拡散しつつある。

いまのうそつきローンは2000年代半ばに広がったものと同じではないし、それほど広がってもいないが、サブプライム自動車ローンやジャンク級(投機的格付け)社債のブームをつくりだした熱狂に、住宅ローン業界が加わりつつあることが示唆される。
マンハッタンビーチの住宅の購入資金が貸し付けられ、その債権がトリプルAクラスの証券に組成されて売りさばかれる筋書きは、借り手と貸し手と投資家がそろってリスクを読み間違えた時代を彷彿(ほうふつ)とさせる。

経緯はこうだ。
テレビ番組のプロデューサーが今年、クリーム色のこの家を買った。
ローンを提供したベロシティ・モーゲージ・キャピタルによれば、同社は賃貸に出すなど事業目的で購入する借り手にのみ融資する。
同社は全ての顧客に購入の目的を申告した文書に署名させる。
ベロシティはこの192万ドルの住宅ローンを、他の数百本のローン債権と束ねて証券化した。
手掛けるのはクロル・ボンド・レーティング・エージェンシーというウォール街の証券化マシンだ。
クロルは3億1300万ドル規模の証券化商品の宣伝資料に、この家の写真を載せる。
同商品の大半はトリプルA格付けを得ていて、資料には買い手が「投資家」だと記されている。

ところが記者が最近、マンハッタンビーチの家を訪ねると買い手のプロデューサーが出てきて、賃貸に出すつもりは最初からなかったと言う。
そのような意図を記した文書に署名したこともないという。
その家には彼自身が家族と住んでいた。

住宅ローン危機の後に導入された新規制の下で、うそつきローンは事実上の違法行為となった。
返済能力確認の手続きを貸し手が怠れば借り手に訴えられ、住宅の価値以上の損害賠償を支払うことになりかねない。
しかしこの規則は「事業目的」の購入のための住宅ローンを例外としている。
ベロシティのクリス・ファーラー最高経営責任者(CEO)は顧客が事業目的で購入していることを確認するために、同社では借り手が手書きで記した書簡に署名することになっていると話す。
しかしこうした貸し手がどの程度慎重に顧客を選別しているか、という疑問もある。

同CEOはマンハッタンビーチの買い手についてはプライバシーの保護を理由にコメントを控えた。
この証券化商品の販売を手掛けたシティグループと野村ホールディングスの担当者は、コメントを控えた。

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