世界の投資関連ニュースを独自視点でお伝えしています。

2016年の世界経済のカギを握るのはやはり原油価格

昨年は原油価格と中国経済に振り回された1年だったが、2016年についても、引き続き原油価格の動向が世界経済のカギを握ることになるだろう。ただ、原油価格の低下には短期的な影響と長期的な影響があり、短期的な影響は徐々に収束に向かうことになる。先進国経済にとっては、徐々にプラスの影響が大きくなってくる可能性が高い。

 少々気になるのは、世界経済がすべて米国の内需に依存している点である。米国は世界最大の石油消費国であると同時に、世界最大の産油国でもあり、原油価格低迷からはプラス・マイナス両方の影響を受ける。ロシアなど原油価格低迷によって打撃を受けている国からの資金流出が続けば、金融市場の混乱が長引く可能性もある。

中東全体より「米ロ+サウジ」の方が産出量が多い
 原油価格低迷の影響を正しく分析するには、そもそも原油がどの地域で、どの程度の量、生産されているのかを正確に把握する必要がある。

 世界でもっとも大量に石油を生産しているのは米国で、1日あたり1200万バレルの生産量がある(2014年)。2番目はサウジアラビアで1200万バレル弱の生産量となっている。サウジアラビアは2013年まではトップの生産量を誇っていたが、米国の生産量が増大したことで1位の座を明け渡した。3番目はロシアで1100万バレルの生産量がある。

 全世界的に見るとこの3カ国が石油の3大生産拠点であり、全世界の産出量の4割を占めている。石油の多くが中東で産出されているというイメージがあるが、中東の産油国をすべて足し合わせても全体の3割程度であり、トップ3カ国よりもシェアが低いというのが現実だ。

 OPEC(石油輸出国機構)は原油市場に絶大な影響を持っているといわれているが、現実にはOPECに影響力があるのではなく、その中で突出した産出量を誇るサウジアラビアの影響力が大きいと考えるべきである。最終的には米国とサウジアラビアの意向で原油価格が決まってくる図式だと見た方がよい。

 ロシアは米国とサウジアラビアに次ぐ石油大国だが、市場の価格形成にあまり影響力を行使できていない。その理由は2つあると考えられる。ひとつは、ロシアにはグローバルに通用する金融市場がなく、市場に対する介入余地が小さいこと。もうひとつは、ロシアの原油採掘コストがかなり高く、価格競争力がないことである。

原油価格低迷の長期化で打撃を受ける国は?
 昨年末、OPECが減産を見送る決定を行ったことで、原油価格低迷が長期化することはほぼ確実な状況となった。OPECが減産を見送った最大の理由は、採掘コストの安いサウジアラビアが体力勝負に出たことであり、表向きは米国のシェールガス事業者への対抗措置ということになる。

だが、原油価格が下がってもっとも困るのは、最大の産油国の1つでありながら、採掘コストが高いロシアであることは明白である。実際ロシアやベネズエラなど、国家収入の多くを石油に頼る反米的な国が、今回の原油価格低迷によって大打撃を受けている。一般的に思われているほど、原油価格低迷によって米国経済が影響を受けているわけではない。サウジアラビアと米国が原油価格をめぐって対立関係にあるというのは、少々、短絡的な見方といえるだろう。

 では、原油価格の低迷は、世界経済に対してどの程度の影響を与えるのだろうか。米国、欧州、日本といった先進国は、合計すると1日あたり3600万バレルの原油を消費しており、これは全世界の産出量の4割に達する。

 原油価格は2014年以降、1バレル=100ドルから40ドルへと下落しているが、これは産油国に支払われる原油の販売代金が半額以下になったことを意味している。金額にすると年間約95兆円に達するのだが、原油価格の下落は、毎年100兆円近くの富が産油国から先進国に移っていると言い換えることが可能だ。

 先進国は安価にエネルギーを手にすることができるので、当然、経済の活性化につながる。特に石油の消費量が多い米国では、原油価格が1ドル下がると個人消費が1%増加するとまで言われる。実際の影響はもっと小さいかもしれないが、原油価格の下落分がそのまま他の消費に回ると仮定すると、数字上はGDP(国内総生産)を1.5%押し上げる効果を持つ。

 先進国にとって原油安は長期的なメリットが大きいということになるが、裏を返せば、資源国にとってはマイナスということになる。石油の販売代金減少が経済を低迷させることになるし、短期的には投機資金の引き上げによって市場が混乱する。実際ロシアでは、大量の資金が国外に流出して通貨ルーブルが暴落、10%を越えるインフレが発生して国内経済は大混乱となっている。

現在の原油価格40ドルはおそらく「底」
 整理すると、原油価格の低迷は、短期的には金融市場に混乱をもたらすものの、長期的には先進国経済を活性化させることになる。一方、資源国の経済は短期的な市場の混乱が終わっても、しばらくは低迷が続く可能性が高くなる。教科書的に考えれば、短期的な市場の混乱はそろそろ収束しつつあり、先進国経済の活性化という長期的なメリットが顕在化してくるタイミングということになるだろう。

 このまま先進国経済が原油安のメリットをうまく享受する形になれば、2016年の世界経済は比較的安定的に推移することになる。ただ少々気になるのが、米国が持つ石油に関する二面性である。米国は世界最大の石油消費国だが、冒頭に述べたように世界最大の産油国でもある。

 米国の石油の総消費量は1日あたり1900万バレルと産出量を大きく上回っており、今のところ消費国としての側面が強い。だが天然ガスなどを含めたエネルギー全体では、近い将来、完全自給が可能となる見込みであり、米国は資源国としての色合いが濃くなってくる。

kaya160105-b.jpg

 最終的に米国がどちらに傾くのかは今後の原油価格次第であり、正確な数字は誰にも予測できない。ただし、過去の価格推移からある程度の見通しを立てることは可能である。戦後の原油価格は、オイルショックによって高騰したものの、インフレを考慮した現在価格に換算すると平均で37.4ドルと計算される。現在は平均値にかなり近づいており、やはりこのあたりが底と考えるのが自然だろう。

関連記事

アーカイブ